概要
筑駒の算数2021年度は、理論的には、非常に易しい問題ばかりでした。
過去30年間で、最も易しかったのではないでしょうか。
大問4題とも、問題文を読み終わった瞬間に、解法が思い浮かぶものばかり。
時間無制限で解けば、満点続出でしょう。
しかしながら……です。
そこは筑駒。ただでは合格させてくれません。
短い制限時間の中で、これだけの作業量をこなすには、それはそれで、相当に効率の良い解き方をする必要があります。
そして、実際、4問とも、そのような工夫のできる問題でした。
つまり、やみくもに手間のかかるだけの問題ではなかった、ということです。
そして、効率の良い解き方を時間内に思いつくには、かなりの反射神経が必要。
だから、やはり差がつくのですね。
また、筑駒にはよくあることですが、特に2021年度は、小問(1)が非常に易しく、正答率は100%ではないかと思われる問題も、ありました。
極端に易しい問題と、極端に手間のかかる問題のはざまに、少数の「差がつく問題」が「かろうじて」存在している状態。
受験生全員が、ほぼ同じ得点圏内に密集している状態。
結局、勝敗を分けたのは、
の、2点だったと推測されます。
このような出題傾向になった原因は、小学校の長期休校による、カリキュラムの未消化にあります。
筑駒は、出題範囲を制限することを、事前に告知していました。
そこで、算数の知識ではなく、発想や、頭の回転の速さを試す方向へ、大胆に転換したものと思われます。
以下に、「出題分野&難易度マップ」を掲載致します。(難易度は、レッツ算数教室の分析によります)
Aが最も易しく、BCDEの順に、難しくなっていきます。
出題分野&難易度マップ | ||
大問1 | ||
(1) | ・規則性 | B |
(2) | ・規則性 | C |
(3) | ・規則性・不等式 | E |
大問2 | ||
(1) | 場合の数 | B |
(2) | 場合の数 | C |
(3) | 場合の数 | B |
(4) | 場合の数・3進法 | D |
大問3 | ||
(1) | 場合の数 | C |
(2) | 場合の数 | D |
(3) | 場合の数 | E |
大問4 | ||
(1) | 点の移動 | B |
(2) | 点の移動 | E |
点の移動 | E |
Eは、時間に追われて解くと、どこかでミスってしまうのではないか、ということで、Eにしました。
B、C、Dで満点が取れたかが、決定的です。
それでは、順に見ていきましょう。
大問1
(1)
解説の必要はないでしょう。
(2)
となり合う平方数の差が、奇数の数列になることは、有名です。知らなかった人は、理由を考えつつ、覚えましょう。
(3)
となり合う奇数の比の問題。
(2×A+1)÷(2×A-1)<1.02
と書くと、中学校の不等式。
記述式の筑駒で使って良いか、微妙です。
でも、差の2が0.02(2%)にあたる、と考えると、2×Aは約100となり、だいたいの見当はつきます。
これが、「効率的」な当てカン。
あとは、前後を根性で書き出せば、すぐ答えが見つかります。
大した根性は必要ありません。
大問2
(1)~(3)は、そのまま、塾のテキストに出ているのではないでしょうか?
「筑駒なのに、数字替え問題?!」
「まさか、引っかけ?!緊張するわ。」
いいえ、ただの数字替え問題です。
ただただ、驚くばかりです!
その分、(4)が手間。
(4)を解くにあたっては、「3進法で3ケタの整数は、何個あるか?」という問題を解決しなければなりません。
3進法は、全員「不慣れ」
突然きかれても、とまどってしまいます。
最も確実なのは、考えるより先に、ダーッと書き出すこと。
意外と、これが正解だったかも(笑)
3進法ですから、わりとすぐ4ケタになります。
でも、ここで、
「なぜ、小問(3)が存在するのか?」
と考えられるとベストです。
普通、筑駒は大問1つにつき、小問3つ。
ところが、本問は、小問4つ。
なぜ1個多いのか?
それは、小問(3)という、小学校3年生にも解ける簡単な問題を「あとから」挿入したからと考えられます。
ここがミソです。
本問の原案は、おそらく小問(3)がなく、(4)が(3)だったのです。
でも、出題陣が検討した結果、
「不慣れな3進法が、10進法と、どのような関係にあるのか、というヒントを与えることで、効率的な解き方を思いつけるようにしてあげよう」
ということになり、あえて、(3)をあとから挿入したのではないか?
というのが、レッツ算数教室の推察です。(憶測の域を出ませんが)
せっかくいただいたヒントですから、有効活用しましょう。
ちなみに、10進法の3ケタの整数は、
よって、9×10×10=900個あります。
この計算方法を意識、確認し、(4)に生かすために、(3)を挿入したと考えられます。
999ー100+1=900個
などとやって求めたら、出題者が泣きます。
ここは、かけ算(積の法則)で、クールに解きましょう。
この方法でいくと、3進法の3ケタの整数は
2×3×3=18個です。
思いつけば、ダーッと書き出すより速いですね。
大問3
本問は、(1)が(2)のヒント。
(2)が(3)のヒントです。
回転すれば、もとの図形と重なる「対称性」を備えた図形ですから、当然、かけ算で求めることになります。
大問4
(1)は解説不要でしょう。
(2)は、考え方は易しいですが、効率的に解く工夫が必要でrす。
PQR3点の高さが一致するには、どれか2点が一致することが必要です。
その2点が一致しているときの、それぞれについて、残りの1点が一致しているかを調べます。
その際、進行グラフをかくと、グラフの「対称性」を利用して、効率的に求められます。
では、初めに、どの2点を検討すべきか?
ここが考えどころ。効率性に大きく影響します。
問題文の図の前面、PRについて調べるのが、視覚的にはラクそう。
というわけで、無意識のうちにPとRの2点を選択し、高さが一致する時間とその高さを求めるのは、実は最悪。
なぜならば、秒速2と秒速1の和は秒速3となり、3で割る羽目に陥るから。
分母が3の分数がゴチャゴチャ出てきて、計算が爆発します。
PとQだと、速さの和が5で、割り切れます。
実際、これで試すと、時間も高さもすべて整数!何と!
しかも、PとQの高さが5で一致するときは、Rが一致するはずはなく、省略できます。
これで、(2)アイとも、意外と速く解けます。
PRを図の前面にかいて、注目を集めているのは、もしかすると引っかけです。
2021年度に受験した6年生は、異例ずくめの1年間でした。
春先の3月~6月上旬まで、小学校が休校。
塾も、カリキュラムが大きく乱れました。
その最大のつけが、夏期講習に押し寄せました。
通常、学校の夏休みは6週間のところ、春先に休校となった分を取り戻すため、2週間に短縮されました。(地域によりますが)
その結果、大手塾の夏期講習も、授業時間の大幅短縮を迫られ、壊滅的なダメージを受けました。
中学入試を実施する多くの学校が、これらの点を考慮して、試験問題は易し目の傾向になりましたが、文部科学省の直轄地・筑駒は、とりわけ易しくなりました。
この異例の傾向が、次年度以降も続くとは、考えられません。
2022年度は、平常運転に戻る可能性が高いと思われます。
ただ、2021年度の大胆な試みによって、筑駒は、新たなデータとノウハウを手にしたのではないでしょうか。
もともと、教育指導要領に忠実で、受験的知識の出題は控えめな筑駒ですが、本年度は、この傾向を極限まで推し進めました。
世間がこれを知るのは、6年後かもしれませんが、筑駒は、今年の中学1年生を観察し、結論を出すはずです。
大手塾の合格実績を見ていると、例年と大差なく、前者だった可能性が高いです。
その分、今後の出題に反映されることが、予想されます。
平常運転に戻るといっても、完全に元通りといえるかは、微妙です。
2022年度入試のふたを開けてみないと、わかりません。
よって、2022年度向けの対策としては、オールラウンドなものが求められます。
もともと、筑駒の受験生の多くは、2月1日に、Kとか、Aとか、Kとか、Mとかいった学校を受験し(もちろん、どれか一つです)、ほぼ、ダブル第一志望の形で、筑駒を受験します。
出題傾向は中和され、結局オールラウンドに勉強する必要があります。
逆に、そのくらいの余裕がなければ、本気で筑駒を目指しているとはいえません。
このあたりの事情については、当ホームページ内、
「出題傾向の突然の変化に備えて」(タップ、クリックできます)
の記事で、くわしく説明しています。
これが、2022年度の受験生の筑駒対策です。
(青い文字をタップ、クリック) |
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