慶應湘南藤沢中2019年の算数は、おおむね例年通りでしたが、少し易しかった印象です。
中学受験・算数に特有のテクニックをバンバン出題するというようなものではありません。
あまり見たことのない、ユニークな問題が多く(大問3、4、5、6など)、勉強の達成度よりも、その場の思考力、地頭を試す要素が、強かったといえます。
順に見ていきましょう。
大問1
(1)「数の性質(最大公約数)」
ウオーミングアップ問題です。落ち着いて解きましょう。
(2)「計算の工夫」
125×8=1000は、必須知識です。(0.125=1/8と同じことです)
( )内は、部分分数分解です。(1/3-1/9)×1/2になります。
大問2
(1)「平面図形(三角形の相似)」
3辺の長さが3:4:5の直角三角形がたくさんできます(相似)。
三角形ABE、EHG、DFGです。
EC=12cmより、EG=15cm、FG=3cm、DG=5cm(答え)
(2)「場合の数」
「男女男女男女」または「女男女男女男」のパターンです。
男子の並べ方は、3×2×1=6通り。
女子の並べ方も、3×2×1=6通り。
よって、6×6=36通り。
これが、2パターンあるので、
36×2=72通り(答え)
(3)「体積(三角すい台)」
容器全体と空気部分は相似で、相似比は、2:1。
よって、体積比は8:1。
容器全体の体積を8分の7倍すれば、水の量が求められます。
12×8÷3÷8×7=28㎤(答え)
ここまで、基本的な問題ばかりでした。
満点で乗り切りましょう。
大問3「平面図形」
通常は、「牧場のくいにつながれた牛が、草を食べることができる範囲」などの設定で、出題されます。
その場合は、くいが移動しないことから、円運動だけ考えます。
ところが、本問は、犬をつなぐひもの、片方のはしが移動するため、珍しい問題になっています。
ポイントは2つ。
以上をふまえて、解いてみましょう。
くわしくは、授業で説明します。
大問4「ルール指定・規則性」
(1)「練習」
まずは、問題文指定のルールをよく読んで、何をするのか、確認です。
(2)「工夫」
(1)では、様子がまったくわからない状態で、とにかく何か書いたわけですが、おすランプが3つだったので、要領の良さ、悪さで、ほとんど差はつきませんでした。
ところが、(2)では、6個のランプをおすので、やり方がまずいと、手間取るのみならず、ミスの確率が上がります。
そこで、ミスしないように、かんたんな表を作りましょう。
たとえば、①のランプをおすと、②⑤のランプが反応します(明かりがついていれば消え、消えていればつきます)。
このことを、「②一、⑤一」と表記します。「一」は「正」の字のはじめの「一」です。
それぞれの操作のたびに、反応する番号に印をつけていきます。
すると、それぞれのランプが、何回反応したか、わかります。
たとえば、①は2回反応しているので、「消えた、ついた」で、最後はついています。
②のランプは、「消えた、ついた、消えた」で、最後は消えています。
操作をすべて終了して、ついているランプは、①③⑤(答え)
(3)応用
(2)で、最後に何回反応したかを集計しました。
その際、
という規則性に気づきます。
さらに、反応したのが、右隣りのランプがおされたことによるものか、左隣りのランプがおされたことによるものかも、関係ありません。
もちろん、その順序も関係ありません。
反応した「回数」だけが問題です。
それならば、
最終結果に変化はありません。
ところで、①を2回(偶数回)おすと、何もしなかったのと、結果は同じです。(②と⑤が、消えてつく、あるいは、ついて消える。つまり、何もしないのと同じ。)
ならば、(3)で19回おしているうち、2回(偶数回)おしている番号は、削ってしましましょう。
すると、残りは、
⑤→①→②→□→③
となります。(⑤①②の順番は、どうでもいいです。同じ番号が2つ見つかったところから、どんどん削除して、残った番号が⑤①②です)
⑤→①→②の時点で、ついているランプは①。残りは消えています。
最後の③で、すべてのランプがついたので、□が終わった時点では、①③⑤はついていて、②④は消えていなければなりません。
□では、③⑤のランプをつけるため、④のランプをおします。(答え)
本問は、塾での勉強(知識・パターン暗記)が、全く関係ありません。
地頭と、ルール指定問題向けのトレーニングが、すべてです。
慶應湘南藤沢中らしい、傑作です。
⑤→①→②→□→③が残ったとき、④だけありません。
最後にすべてのランプがつくようにするには、すべてのランプを平等に扱わなければなりません(対称性)。
よって、④をおします。
大問5「速さ」
(1)「流水算」
5.4×2×3÷2÷1.8=9時間(答え)
(2)上りの船は、川の流速分だけ遅くなり、下りの船は、川の流速分だけ速くなります。
よって、出会いの時間は、川の流速に影響されません。
5.4232=64.8…AE間の距離
64.8÷3÷2=10.8km/時(答え)
(3)下りの船の速さは、10.8+1.8。
10.8:1.8=6:1であるから、下りの船は、川の流速によって、速さが6分の1増している。
よって、本来ならC地点(中心角合計360度)で出会うところ、P地点(中心角合計360÷6×7=420度)で、出会う。
よって、CDの真ん中(半円の中心)をOとすると、POQ=60度。
OQ=5.4÷2=2.7km
(5.4×5-2.7)÷3=8.1km/時(答え)
大問6「割合」
(1)6÷(6+5+3)=3/7(答え)
(2)先に必要量を入れ終わったパイプを止めるだけです。少々手間はかかります。
(3)仮に、23本のパイプをさらに細かく分けられるとするならば、6:5:3の配分になるようにすれば、全くムダなく、最短の時間で、入れ終わります。
よって、時間を短くするには、なるべく6:5:3に近づければよい。
が、理想です。
もっとも近いのは、A10本、B8本、C5本。
A、Cは、理想の時間より速く入れ終わります。
よって、Bが最も遅い。
5本なら60分なので、8本なら、
5×60÷8=37.5分(答え)
大問3以降は、中学受験・算数では、あまり見かけない要素が含まれています。
特に、大問4は、規則性が見つからないと、かなり苦戦します。
(1)(2)の誘導に乗りながら、作業を省略できないか、効率化できないか、よく観察することが、大切です。
このような勉強の姿勢は、計算問題にも表れています。
大問1(2)は、計算の工夫により、作業を大幅に省略できます。
そして、全体を通じて、計算はあまり手間がかかりません。(大問5の円周率は、3です)
2019年の問題を見る限り、学校の方針として、工夫のしようがない単純計算を、黙々と練習させることは、考えていないように見えます。
それよりも、作業を効率化するために「工夫」する知恵を、身につけましょう。
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