聖光学院中学の算数は「数学化」に特徴があります。そこで、今回はこの点にしぼってご説明します。
次の2つの過去問を比べてみましょう。
どちらも食塩水問題です。容器A、B、Cが出てきます。一見すると、よく似ています。ところが、解き方は全く異なります。
聖光は、わからない値(変数)が3つあります。中学校の数学で解くと、3元1次連立方程式になります。
栄光は、わからない値が2つで、未確定の条件がついています。
すると、どうなるでしょうか?
聖光は「倍数算」という名の連立方程式を使うと、何とか解けます。使わないと、かなり難しくなります。
これに対して、栄光は、方程式を立てようとすると、未確定条件がじゃまをして、ややこしくなってしまいます。ですから、倍数算は使わず、算数的なやわらかいアイデアで解くべきです。
ここに、両校の教育方針の違いがはっきり表れています。
中学受験の段階で、中学高校の数学を予習しておくことが望ましいと出題者側が考えているか?
聖光は「予習歓迎」のようです。
聖光は、連立1次方程式をあやつれると圧倒的に有利です。では、そこまで勉強しないと合格できないのでしょうか?
平成25年第1回の算数「合格者平均点」は129.4点です。つまり、合格者も平均すると20.6点「失点」しています。
そして、他の問題の難易度からみて、失点の大半は、第5問(2)アイに集中していると考えられます。ということは、「受かった人も、ほとんどできなかった。捨て問だった」ということです。
ただし、捨て問といっても、通常の「満点阻止問題」ではありません。
「まあ、3元1次連立方程式まで予習しなくてもよいけれど、予習してきた熱心な人には、たっぷりボーナスをあげます」
というスタンスです。あとはどうするか?受験生しだいです。
この「方程式」。実は、中学受験史の「鬼っ子」です。
昔の中学受験では、方程式は使用禁止でした。「方程式を使うと落ちますよ」と言われていた時代もあります。なぜでしょう?
一つには、方程式だと、問題文を機械的に式で表せば機械的に解けてしまい、思考力が測れないから。
もう一つは、小学生のうちから中学の数学を先取りするのは、受験勉強の過熱化、教育格差の拡大、といった問題を引き起こし、好ましくない、と国が考えているからのようです。出題はなるべく文部科学省の教育指導要領の範囲内で、ということです。
このように、方程式を使った解法は好ましくないとされてきました。
ですから、記述式の問題では方程式は使えないし、方程式を使うとかえって解きにくい問題が今でもよく出題されます。
実際、先ほどの聖光の問題は、解答欄に答だけ書けばいいのに対し、栄光は、考え方の説明ももとめています。
塾が正面きって方程式を教えず、「倍数算」というグレーゾーンのテクニックですませているのも、そのあたりの事情からです。
方程式とどのようにつきあっていくか?中学受験算数で、もっとも難しい問題です。
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