鷗友学園2019年第1回算数は、受験者平均点、合格者平均点とも、大きく上昇しました。
学校公表の受験者平均点は、100点満点で57.7点、合格者平均点は72.2点となっています。
例年、第1回は、それぞれ45点前後、55点前後ですから、上げ幅は10点をこえ、とりわけ合格者平均点の方が、大きく上がっているということです。
例年も、2019年も、第2回の合格者平均点は72点ほどですから、注目すべき現象です。
2019年第1回は、問題が易しくなったのでしょうか?
その影響も、多少あるかもしれませんが、第1回(2月1日実施)の受験生のレベルが上がった可能性が高いです。
つまり、鷗友学園を第1志望校とする受験生のレベルが上がったということです。
今後も注目の学校です。
順に見ていきましょう。
大問1「計算問題」
(1)ウオーミングアップ問題です。ただし、0.058×13の部分がミスしやすいかもしれません。
この計算を筆算で行うとき、0.058×1の結果を「058」と表記すれば安全ですが、「58」と表記すると、小数点をおろすとき、ケタがずれてしまうリスクが上がります。
筆算では、たてにそろえて、きちんと書けるように、練習しておきましょう。
(2)0.125=1/8は常識です。
大問2「数の性質」
150÷3=50人…クラスの人数
2×(50-5)=90個…みかんの個数
150と90の最大公約数は30。
答え…Aを30セット作ることができます。
150÷30=5個(りんご)、90÷30=3個(みかん)
注意:
問題文前半では、クラスの人にりんごとみかんを配っています。
などの言い回しから、
「そうか。全員に、過不足なく分けてあげる方法を、考えるのだな」
と、予測変換してしまうと、混乱します。
先入観、固定観念は、「解法パターン暗記」「鉄則」の弊害です。
本問が、最終的にきいているのは、「Aセットを何袋作ることができるか」であって、クラス全員に配ることは、全く考えていません。
大問3「調べる問題」
(1)「1000から2020」までを、いっぺんに調べようとすると、性質の異なる整数が混ざって、ややこしくなります。
ここは、千の位に注目して、「1000~1999」と、「2000~2020」で場合分けするのが、すっきりしています。
まず、1000~1999について。
千の位が1という点で、共通しています。
百、十、一の位の数は、1以外の0~9
までの数が対等な関係にあります。
よって、積の法則が使えます。
9×8×7=504個
次。2000~2020について
このぐらいは、根性で書き出した方が、安全です。
2013~2019の7個。
504+7=511個(答え)
(2)1000~1999について。
1□□□の□には、1またはAが入ります。(ただし、Aは1ではありません)
入れ方は2×2×2=8個。ただし、すべて1を選んではいけないので、その場合を引いて、7個。
Aには1以外の9種類の数があてはまるので、7×9=63個。
2000~2020について。
2000,2002,2020の3個。
よって、63+3=66個(答え)
本問は、2019年第1回の問題の中で、最も難しかった(ミスしやすい問題だった)と思われます。
大問4「平面図形」「比合わせ」
(1)
三角形EFHと三角形CDHは相似。
FH:HD=三角形EFH:三角形CDH=1:6=5:30
三角形AFIと三角形CDIは相似。
FI:ID=三角形AFI:三角形CDI=4:6=2:3=14:21
よって、(比合わせより)FH:HI:JD=5:9:21(答え)
(2)全体の方針として、三角形AFIの面積から、三角形EFHの面積を引きます。
三角形AFI=70×(1/2)×(2/3)×(2/5)=28/3
三角形EFH=三角形AFI×(1/4)×(5/14)=5/6
(28/3)-(5/6)=51/6=8.5㎠(答え)
鷗友では、定番中の定番問題です。
解けることも大切ですが、きちんと説明できることも、大切です。
大問5「立体図形(移動)」
(1)「体積」
長さ10cmの三角柱の両端に、円すいが半分ずつくっついた形になります。
3×3×3.14×4÷3+6×4÷2×10=157.68㎤(答え)
(2)「表面積」
(5×3+3×3)×3.14+(5+5+6)×10=235.36㎠(答え)
大問6「ニュートン算」
(1)ポンプ1台が、1分間にくみ出す水の量を1とします。
6×8-9×4=12…8-4=4分間で水そうに入った水の量。
12÷4=3倍(答え)
(2)6×8-3×8=24…水そうがいっぱいのときの、水の量。
12台のポンプで1分間に12の水をくみ出しますが、3入るので、見かけ上は、12-3=9減ります。
24÷9=8/3分=2分40秒(答え)
典型的なニュートン算ですが、きちんと説明できるように、理解しておきましょう。
大問7「速さと比」「つるかめ算」
Aさんの速さを4、Bさんの速さを2、Cさんの速さを1→6と設定します。
AさんとBさんがかかる時間の比は、速さの逆比で、1:2。
差の1が15分なので、Bさんがかかった時間は30分。
全体の距離は、2×30=60となります。
Cさんは、30分以内で着けばよい。
速さは1→6、時間合計30分、距離合計60の「つるかめ算」です。
(6×30-60)÷(6-1)=24分以内(答え)
ポイント:
ちょうど30分で着くときの時間をもとめて、それより早く走り始めれば、Bより早く着くので、2位以内となります。
「2位以内」は「1位」も含むので、Aより早く着いてもかまいません。
よって、「何分以後」かは、問われていません。
学校公表の資料によると、最も正答率の低かった問題は、やはり大問3(2)9.8%、(1)34.8%でした。
また、合格者と不合格者の正答率の差が最も大きかったのは、大問6(2)50.7%、(1)44.2%でした。
大問3という、前半に配置されている問題が、最も難しいということは、ここで時間配分を誤ると、合格が難しくなることを、意味しています。
また、大問6「ニュートン算」は、定番通りの出題なので、ただ解くだけでなく、きちんと説明できたかどうかで、大きく差がついたものと思われます。
「時間配分」と「説明」の練習が、対策として有効です。
両者のうち、鷗友学園が重視している「説明」「記述式」の練習が、特に大切です。
学校説明会では、「答案の、ちょっとしたメモでも、ていねいに意味をくみ取って、部分点をつけるので、何か書いておいて下さい」という意味のことを、強調しておられました。
これが、お題目ではなく、事実であることが、大問4「平面図形」の問題をみると、よくわかります。
本番で配られた問題用紙には、平行四辺形ABCDの全く同じ図が、(1)にも(2)にも掲載されています。
その意味するところは、(1)で比を求める際に書き込んだ数字を、(2)で面積を求める際に、消さないでほしい、ということだと推察します。
ここまで徹底的に、書き込みを重視しているのは、非常にていねいな採点です。
普段の勉強の中でも、図面にゴチャゴチャに書き込むのではなく、人に説明するつもりで、複数の図面に、目的別に書き分ける練習をすると、よいのではないでしょうか。
鷗友学園2019年第2回算数は、例年通りの出題傾向、難易度でした。
大問3、大問8が方程式的な問題で、難しかったようですが、それ以外は、大問6の平面図形など、鷗友らしい問題が並んでいます。
「鷗友らしい問題」とは、オーソドックスな問題について、きちんと説明できるか、思考力、記述力を試す問題、という意味です。
順に見ていきましょう。
大問1「計算問題」
(1)「0.375=3/8」は、必修です。
(2)式の途中に□がある問題(還元算)は、一般的には正答率が下がりますが、鷗友の受験生は、よくできます。
取りこぼさないよう、逆算をしっかり練習しておきましょう。
大問2「四捨五入」「不等式」
X÷50≧10.25
X≧10.25×50=512.5…①
X÷50<10.35
X<10.35×50=517.5…②
①②より、Xは、512.5以上517.5未満の3の倍数。
よって、513,516(答え)
注意:
10.35未満を10.34以下としないように、気をつけましょう。10.34999…も含みます。
大問3「割合」
商品Bの原価を⑮、定価を⑳とします。
(830×2+⑳)×0.9=1494+⑱
(1494+⑱)-(650×2-⑮)=194+③
194+③=260
①=22
よって、⑮=330円(答え)
商品Bの原価:定価は3:4です。
ならば、なぜ③:④としないで、⑮:⑳としたのでしょうか?
定価は、のちに9割、すなわち0.9倍します。
つまり、定価は10の倍数に設定しておいた方が、0.9倍後も、整数として生き残れて、気分がいいです(計算が効率的です)。
よって、定価を、4と10の最小公倍数⑳と設定したわけです。
大問4「平面図形(三角形の相似)」
ACとBEの交点(交わる点)をF、ACとDEの交点をGとします。
たてAB、横BCの「長方形」を考えると、ACは長方形の対角線、BEはもう一つの対角線の一部。
よって、三角形FBCの面積は、三角形ABCの面積の1/2。
また、三角形ABCと三角形EDBは相似で、相似比は4:3。
よって、BD:DC=3:1。
よって、三角形ABCと三角形GDCの相似比は、4:1。面積比は16:1。
(1/2)-(1/16)=7/16
16:7(答え)
注意:
「図形問題で60度をみつけたら、30度、60度、90度の直角三角形(正三角形の半分)を考えろ!。これ鉄則!」
という塾の先生もいるでしょう。
確かに、この「鉄則」があてはまることが、多いです。
でも、本問では、あてはまりません。
別に、60度でなくても、59度でも何度でも、答えは同じです。
本問を解くのに、60度は使わない、関係ない、ということです。
「鉄則」は、破れました。
レッツ算数教室では「算数で、鉄則やパターン暗記は、避けるべき」と、くり返し言っています。
「とりあえず、真っ先に考える方向性」ではありますが、いつでも方向転換できる「思考の柔軟性」が必要です。
鷗友学園の先生が、そのことを教えて下さっています。
大問5「立体図形」「場合の数」
(1)たとえば、正三角形がAFCのとき、この正三角形の名前を「B」とします。(頂点Bをカットしたときにできる正三角形、というイメージですね)
立方体の頂点は8個
(答え)8通り
(2)立方体の表面をかする切り方を考えます。
たとえば、面ABCDをかするとき、3つの頂点の選び方は、4通り。
立方体の面は6面。
よって4×6=24通り(答え)
大問6「平面図形(比合わせ)」
(1)
AE:ED=3:2(和は5)
BF:FC=1:2(和は3)
よって、AD=BC=15(5と3の最小公倍数)と、設定します。
三角形BGFと三角形EGAは相似で、相似比は5:9
よって、BG:GE=5:9(和は14)
三角形BHCと三角形EHAは相似で、相似比15:9=5:3
よって、BH:HE=5:3(和は8)
14と8の最小公倍数は56なので、BE=56と設定します。
よって、BG:GH:HE=20:15:21(答え)
(2)
三角形GBFの面積は、三角形HBCの面積の(20/35)×(5/15)=4/21=8/42
よって、三角形HBCの面積を42とすると、三角形HPCの面積は
(42-8)÷2=17
よって、BP:PC=(42-17):17=25:17(答え)
大問7「速さ(進行グラフ)」
(1)
7.2÷48=0.15時間=9分…電車がA駅からB駅に行くのにかかる時間
6分×6-9分=27分…友子さんが、B駅からA駅に行くのにかかる時間
7.2÷27×60=16km/時(答え)
(2)
進行グラフ上で三角形の相似を利用します。
7.2×(1/3)=2.4km(答え)
大問8「消去算」
A1+B1+C1=D9…①
A1+C3=B2+D4…②
B1+D1=C2…③
さて。
①②には、ABCDがすべて含まれていますが、③には、BCDだけで、Aがありません。
そこで、①②を利用してAをそうじすると、BCDだけの式が2本残ります。
①-②をします。
B1+C1-C3=D9-B2-D4
B1-C2=D5-B2
B3-C2=D5…④
③④を比べます。
④のC2の部分に、B1+D1を代入すると、
B3-(B1+D1)=D5
B2-D1=D5
B2=D6
B1=D3
よって、B=3、D=1と設定すると、A=4、C=2も自動的に出てきます。
A3=C1+□
4×3=2×1+□
□=10
和が10で、個数が最小の組み合わせは、A2+C1、A1+B2。いずれも右(答え)
大問3、大問8の方程式的な問題を落としても、8割取れます。合格者平均点は、余裕でクリヤーできます。
よって、対策としては、定番問題について、きちんと説明できるようにしておけば良い、ということに尽きます。
また、比を使った解き方では、数字が煩雑になる傾向がみられます。
なるべく数字を簡単に、できれば整数で処理できると、効率的で、ミスも減ります。
そのための工夫を、「傾向(第2回)」の大問3の解説で、説明しておきました。
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