豊島岡2020年第1回算数は、例年通りの出題傾向、難易度でした。
「出題分野&難易度マップ」を掲載致します。(難易度は、レッツ算数教室の分析によります)
Aが最も易しく、BCDEの順に難しくなっていきます。
出題分野&難易度マップ | ||
大問1 | ||
(1) | 計算の工夫 | A |
(2) | 文章題 | B |
(3) | 数の性質 | C |
(4) | 約束記号 | C |
大問2 | ||
(1) | 相当算 | C |
(2) | 場合の数 | E |
(3) | 時計算 | C |
(4) | 平面図形(面積) | C |
大問3 | ||
(1) | 速さと比 | D |
(2) | 速さと比 | D |
大問4 | ||
(1) | 平面図形と比 | D |
(2) | 平面図形と比 | D |
大問5 | ||
(1) | ルール指定問題 | B |
(2) | ルール指定問題 | C |
(3) | ルール指定問題 | D |
大問6 | ||
(1) | 立体切断 | C |
(2) | 立体切断 | E |
(3) | 立体切断 | E |
それでは、順に見ていきましょう。
大問1
(1)計算の工夫
( )を含む計算の順序は、まず( )の中を計算するのが原則です。
そこで、本問も、まず( )の中を計算すると、どうなるでしょうか?
想像してみましょう。
2つの分数の足し算になりますが、分母がそろわず、通分することになります。
通分すると、分母が大きくなり、よって、分子も大きくなります。
後に「÷5」を実行する際、帯分数の整数部分3を分子に乗せなければなりませんが、巨大な分子の計算は、負担ですね。
そこで、分子が巨大化する前に、÷5によって小さくできないか?というアイデアが出てきます。
そこで、分子をチェックすると……
(3と3/4)=15/4の分子は5の倍数。
÷0.3は×10/3なので、やはり分子は5の倍数。
おいしい約分ができるではありませんか。
よって、( )をあえてはずし(分配法則)それぞれの分数を先に5で割ります。
(3と3/4)÷5=(15/4)÷5=3/4
ここで、すごいことに気づきます。
最後に0.75を引くのですから、3/4-0.75=0で、何と、ここは計算不要となりました。
すなわち、( )内の分数の足し算(通分)は、しなくてよい、ということになります。
一石二鳥ですね。渡りに船かな?
結局、1/6×10/3÷5=1/9……(答え)
たったこれだけの計算量で、答えが出ます。
よく、円周率を含む計算では、
「3.14倍以外の部分を( )でくくって先に計算し、最後に3.14倍しなさい」
と言われます。
「計算の工夫」の典型例です。
そのため
「せっかく( )でくくってあるのに、わざわざ( )をはずすなんて、もったいない」
と考えがちです。
でも、それは「固定観念」。
もっと柔軟に考えましょう。
本問は、一見するとただの計算問題に見えますが、実は、応用問題なのでした。
計算の先々まで見通した作戦が有効です。
さすが豊島岡。よく練れた計算問題です。あっぱれ。
(2)
400÷6=66あまり4
500÷6=83あまり2
66×83=5478
答え、5478枚
(3)数の性質
分母の202を素因数分解すると2×101
よって、分子は2または101の倍数のとき、約分できます。
よって、「これ以上約分できない」とは、分子が2の倍数でも101の倍数でもない場合です。
2の倍数は、202÷2=101個
101の倍数は、202÷101=2個
両者が重なっているのは、202の1個
101+2ー1=102(約分できる分数の個数)
202ー102=100個(これ以上約分できない分数の個数
答え、100個
(4)約束記号
まず、( )全体を求めましょう。
( )+13=10/7×(13+1)=20
( )=7
□+5=7×(5+1)=42
□=42-5=37
答え、37
大問2
(1)相当算
A=①
B=②-3
C=③+13
3人の合計⑥+10=100
①=15
答え、15本
(2)場合の数
本問が、初めて歯ごたえのある問題だったかもしれません。
難しい応用問題ではありませんが、ミスしやすいポイントが多々あります。
たとえば、2は2回「だけ」です。よって、□には2を入れてはいけません。
2ケタ | 22 | ➡1通り |
3ケタ |
22□ | ➡9通り |
2□2 | ➡9通り | |
□22 | ➡8通り | |
4ケタ | 122□ | ➡9通り |
12□2 | ➡9通り | |
1□22 | ➡9通り | |
2002 |
||
2012 |
||
2020 |
➡3通り | |
合計 | ➡57通り | |
答え、57番目
(3)倍数
本問を「時計算」とよぶのは、少々違和感があります。
なぜならば、「回数」を問われているだけで、「時刻」を求める必要はないからです。
6時の時、長針と短針は180度開いており、その後、長針が短針と重なり(0度)、追い越して、7時には150度開きます。
180から0まで、8の倍数は180÷8=22あまり4より、22個。
0から150まで、8の倍数は150÷8=18あまり6より、18個。
よって、22+18=40回
答え、40回
(4)平面図形(面積)
本問は「カルネアデスの三日月」といわれる有名問題です。
よって、「答え10㎠」と即答できます。
知識の有無で、圧倒的に差がつく問題です。
解き方は、小半円と大半円の「面積比」が1:2であることを利用します。
「相似比」=AC:AB
「面積比」=AC×AC:AB×AB=20㎠:40㎠=1:2
よって、三角形ABC+小半円×2ー大半円×1=三角形ABC=10㎠
答え、10㎠
大問3 速さと比
はじめに、AさんとBさんの速さの比を求めておきます。
Aさんの速さは、Bさんの平均速度です。
Bさん行き:Bさん帰り=2:3
よって、平均速度は
(2×3+3×2)÷(2+3)=2.4
Aさんの速さ:Bさんの速さ(行き)=2.4:2=6:5
(1)
Aさんが3km進んだとき、Bさんは2.5km進んでいます。
これが3分の1なので、家から学校は7.5km
Bさんが学校に着いたとき、Aさんは7.5÷5×6=9km進む。
7.5×2ー9=6km
答え、6km
(2)
家から学校までかかった時間の比は、A:B=5:6
差の1が10分だから、Bは60分かかった。
60分で7.5kmなので、時速7.5km
答え、時速7.5km
大問4 平面図形と比
(1)
三角形ABCをGを中心にして、3つの三角形GAB、GBC、GCAに分割します。
3つの三角形の面積比を求めます。
GAB:GCA=EB:EC=2:1
GCA:GBC=FA:FB=1:1
よって、GAB:GBC:GCA=2:1:1
AG:GB=ABGC:GBC=3:1
答え、3:1
(2)
三角形GADとGEHは相似で、相似比はAG:GE=3:1
よって、AD=3とすると、EH=1、EC=3、BH=5より、BH:HC=5:4
また、FG:GC=ABG:CAGB=1:1
台形ABCDの面積を12とすると、平行四辺形AECDの面積は6
三角形FBCの面積は9÷2=4.5
三角形GHCの面積は4.5×(4/9)×(1/2)=1
四角形BHGFの面積=4.5ー1=3.5
よって、3.5÷6=7/12
答え、7/12倍
大問5 ルール指定
(1)
9÷4=2あまり1
答え、
Pは2周して1つ、つまりB。
Qは2つ、つまりC。
(2)
Qが2周して1つ進む。
つまり4×2+1=9
PはAを9回通るから、出た目の和は4×9=36
よって、36÷6=6
答え、6回
(3)
300÷4=75cm……Qが進んだ距離。
75÷4=18あまり3
Qは19周目のDにいる。
答え、19回
大問6 立体切断
(1)
台形AEHNには、置いた立方体の面(正方形)が接しています。
この正方形の頂点を、Eから時計回りにEIJKとします。
EK:KH=JK:KH=2:1
EK=10÷(2+1)×2=20/3
答え、20/3cm
(2)
断面図AEGCを考えます。
CからEに直線を引くと、この直線は、置いた立方体の頂点を通ります。
この頂点は、面LMGと接しています。
この頂点をOとすると、三角形の相似比より、CO:OE=1:4
よって、立方体の1辺の長さは、10÷5×4=8cm
答え、8cm
(3)
本問も、(2)とほぼ同じ要領です。共通点は
平面化して考えること
算数の発想法で言うと、「次元を下げて考える」ということになります。
算数の発想法についてじは、当ホームページ内
で、さらにくわしく説明しています。
平面図形、立体図形、速さ、場合の数、数の性質、ルール指定問題など、はば広い分野から出題されており、難易度も中~中の上レベルの問題が、分厚い層を作っています。
よって、対策も、いわゆる定番問題を、網羅的にマスターすることが、最も重要です。
それに基づいて、1問ごとの難易度を見抜く目を、鍛えましょう。
たとえば、大問2(2)の場合の数は、難問ではありませんが、時間がかかり、ミスしやすい問題です。
この位置に配置されているので、「はやく解かなければ」と、あせってしまうと、危険でしょう。
後回しにしても大丈夫です。
そのような判断を、入試の現場で、自ら行えるように、しておきましょう。
大問6(2)(3)も、かなりの難問で、本番で捨て問にしても、大丈夫でした。
「でした」と、過去形になっているのは、この問題が、重要な要素を含んでいて、今後、豊島岡を含む難関校で、くり返し出題される可能性があると思われるからです。
単発の難問ではありません。
実際、2020年度の大手塾の合格判定テストで、類似問題が出題されています。
その年の本番では、捨て問にしても良いが、今後の出題可能性を考えると、本問に過去問演習として取り組んでいる受験生にとっては、捨て問とは言えない、
という問題もあります。
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