桜蔭の国語は、制限時間50分。
大問は2問で、「物語文」が1問、「論説文」または「随筆文」が1問、出題されます。
本文はそれほどの長文ではなく、難解きわまる文章が出題されることはまれであり、精読する時間が十分あります。
設問は、それぞれ5問ほどで、すべて記述式。設問文は簡潔です。
以上より、近年、難関校にありがちな、
「時間に追いまくられながら、ざぁ~と流す」
というタイプの試験ではありません。
逆に、じっくり読み、じっくり考えて解くタイプの試験です。
桜蔭・国語の際立った特徴は、大問1と大問2の関連性でしょう。
大問1は、「論説文」または「随筆文」が出題され、大問2で「物語文」が出題されるのですが、多くの年で、両者のテーマが共通しています。
まさに、
ということを、表しているかのようです。
この点を心得ていると、記述式の答案に深みを出せます。
それは、こういうことです。
多くの学校で出題される記述式問題は、答案を書くための材料(キーワード)が、本文中にあります。
キーワードごとに、配点がなされているというイメージです。
そのため、極端な場合、本文の内容がまったく理解できなくても、文脈を頼りにキーワードを拾い、切り貼り編集すれば、それらしい答案が書けます。
(これは、決して悪いことではなく、「文脈を把握する試験」という意味があります)
ところが、桜蔭の国語では、このテクニックが使えません。
なぜならば、設問で問われていることに答えるには、本文の言葉を「手がかり」「きっかけ」としながらも、そこに想像力を働かせながら、自分の言葉を補っていかなければならないからです。
そのような問題が出されるのです。
つまり、文脈が追えているだけではなく、内容そのものを理解していなければ、答案が書けません。
このとき、大問1と大問2の関連性が役に立ちます。
もし、論説文の内容が抽象的過ぎて理解できなくても、具体的な物語文を読んでいるうちに、論説文の意味がわかる、ということがあります。
逆に、物語文の主題がはっきりしなくても、論説文の主張を当てはめると、スッキリ理解できる、ということも起こります。
ここで得た深い理解を答案に生かすと、答案に深みが出ると思われます。
(もちろん、大問1のキーワードを大問2に転用する、といったようなことには、慎重にならなければいけませんが……)
解答用紙には「マス目」がありませんので、各自、理解に応じて存分に記述することが可能です。
また、同一年度内の関連性だけでなく、年度をこえた関連性もあります。
近年は、時代のキーワードである「多様性」が、共通のテーマになっているように思われます。
その意味で、過去問の検討は、きわめて有効です。