目次 |
「傾向」 |
1、概要 |
(1)出題分野 |
(2)難易度 |
2、各論 |
「対策」 |
筑波大附属中学2021年・算数は、難化しました。
もともと社会と合わせて50分という短い試験時間に対し、ページ数の多い試験問題でしたが、本年度は、さらに1.5倍ほどに増加しました。
算数単独で40分になったことによって、算数に使える時間は増えましたが、それ以上にページ数が増加した印象です。
また、単に長いだけでなく、内容も難しくなっており、折り紙の問題(大問5)や、論理パズル(大問7)などは、かなりの難問です。
(1)出題分野
「平面図形」「立体図形」が半分ほどを占め、「場合の数」「統計」「規則性」「割合と比」などが続いています。
逆に、「速さ」の問題は、小問の中のさらに一部分しかなく、ほぼゼロといってよいでしょう。
(2)難易度
出題分野の片寄りが、学校休校などへの配慮に基づくものであるとすると、難度が上がったことを、どのように解釈するかが、問題です。
難しさの方向は、一層の知能テスト化にあります。
図形問題やパズル問題、統計問題は、空間認識能力や論理的思考力を試すのにちょうど良いのです。
「学校が休校になって、習得した知識量が減ったし、大学入試も知識量より思考力重視、記述力重視に変わりつつあるから、そちらに方向転換した」
と、解釈できます。
「出題分野&難易度マップ」を掲載致します。(難易度はレッツ算数教室の分析によります)
Aが最も易しく、BCDEの順に難しくなっていきます。
出題分野&難易度マップ | ||
大問1 | ||
(1) | 計算問題 | A |
(2) | 計算問題 | A |
(3) | 和と差・平均算 | B |
(4) | 割合と比 | C |
(5) | 平面図形 | C |
(6) | 縮尺・速さ・単位換算 | C |
(7) | 規則性 | B |
(8) | 規則性 | E |
大問2 | 平面図形 | C |
大問3 | 水そうグラフ | C |
大問4 | ||
(1) | 平面図形 | C |
(2) | 立体図形 | C |
大問5 | 折り紙 | E |
大問6 | ||
(1) | 立体図形・場合の数 | C |
(2) | 立体図形 | C |
大問7 | ||
(1) | 論理・場合の数 | E |
(2) | 論理 | B |
(3) | 論理 | E |
大問8 | ||
(1) | 統計 | B |
(2) | 統計 | D |
(3) | 統計 | C |
(4) | 統計 | E |
それでは、順に見ていきましょう。
大問1
(1)(2)「計算問題」
7/15が共通なので、( )でくくりましょう。
(2)~(8)
いずれも、定番問題です。本年度、貴重な得点源です。
問題用紙のページ数が多いことは、試験開始直後にわかるでしょう。
早く後ろの問題まで進みたい!という気持ちにかられながら、大問1の小問群に取り組むことになります。
でも、一行題ばかりなので、解いても解いてもページが進みません。
「後ろの問題は、問題文がすごく長いな。どんな難問なのだろう?先に目を通しておいた方がいいかな……」
と、心配になります。
ここで、どれだけ落ち着いて、問題に向き合えたか?という点が、合否を分けた1つ目の要因です。
大問1(8)「規則性」
本問は、問題文の意味がはっきりしません。
「それぞれの色が光っている時間と、消えている時間は一定です」とありますが、「5等分される」とは書いてありません。
しかし、5等分されると解釈しなければ、解けません。
問題文は、解けるように解釈します。
大問2「平面図形」
アとイが等しいので、「小」+「中」=「大」となります。
大問3「水そうグラフ」
40秒の前と後で、底面積の比は5:9、高さの比は2:1
よって、体積の比は5×2:9×1=10:9
水を入れるのにかかる時間も10:9
よって、40×19/10=76(答)
大問4(1)「平面図形」
45:75=3:5なので、縦に3個、横に5個ならべた長方形について数え、15倍します。
公式から(3+5-1)×15=105個(答)
大問4(2)「立体図形」
最も短い線の結び方は、定番問題です。
その時の部分的展開図の書き方と、ア~オの展開図の書き方が異なるため、二度手間にはなりますが、展開図の各頂点の記号を書き込めば、判別できます。
記号の書き込み方については、確認しておきましょう。
大問5「折り紙」
頂点Cと頂点Eが重なるように折るためには、CEの垂直二等分線(CとEの真ん中の点を通り、CEに対して直角になる直線)を折り目とします。
この要領で、次々と折ります。
逆に、開くときは、折り目に対して線対称移動します。
難問です。
残り時間が少なくなってきて、問題文のページ数は、まだまだ大量に残っていると思われます。
このあたりから、取捨選択が始まるでしょう。
結果的に、大問6は易しく、大問7は難しく、大問8は非常に長いということで、本問(大問5)は、捨て問にしても大丈夫です。
大問6「立体図形・場合の数」
(1)正面や右真横から見て、1個しか見えない列には、1個しか置けません。
2個見える列には、最低1か所、2個置かなければなりませんが、すべての場所に2個置く必要はありません。置いてもかまいません。
以上から、最大何個、最小何個かを求め、その間は1個きざみで、すべての場合があり得ます。
(2)表面積の場合、前後、左右、上下いずれからも影に隠れる部分がないか、注意する必要があります。(本問にはありません)
大問7「論理・場合の数」
残り時間がわずかしかなく、大問8の長文がチラつきながら、本問を解くのは、厳しいものがあります。
そのような中、(2)だけ易しいので、落ち着いて得点できると、差がつきます。
しかも、(2)は大問8のヒントにもなっています。
(1)は、Aが3勝0敗とすると、Aが単独1位で、他のどのチームもAに負けていて、差はつかないので、Aを除外して考えることができます。
次に、Bに着目して、Bが2勝、1勝1分け、1勝1敗……と場合分けしていき、重複するものを除いていきます。
(3)もCが全勝なので、Cを除外して、残りのチームだけで考えれば、解けます。
論理問題には、得意不得意がありますから、捨てるか、取るか、考えどころです。
大問8「統計」
この種の統計問題は、私立中学受験用のテキストには、あまり掲載されていません。
でも、今後は大学入試問題にも、本問の傾向が取り入れられていきますから、放置することはできないでしょう。
本問で最もポイントとなる点は、「平均」の性質です。
たとえば、30人のクラスが2つあるとします。
1つ目のクラスは、全員が1人10冊ずつ本を読んだとします。(平均1人10冊)
2つ目のクラスは、1人が330冊読み、残りの29人は0冊だとします。(平均1人11冊)
平均だけで比べると、2つ目のクラスの方が上回っていますが、読書量が多い傾向にあるのは、1つ目のクラスとも考えられます。
この違いを理解できているかが、問われています。
本問のヒントは、大問7(2)にあります。
大問7(2)では、3勝1敗のBチームと、2勝2分けのCチームのどちらが強いかについて、「負けないチームが最も強いという考え方もあります」と指摘しています。
つまり、特定の試合で大量点をかせぐが浮き沈みの激しいチームより、、多くの試合で安定して得点するチームの方が強い、という考え方です。
これを読書量の傾向に適用すると、大問8(4)の解答になります。
本年度の出題傾向が、特殊な社会状況に配慮した一過性のものなのか?
それとも、試験時間の変更に伴うものであり、次年度以降にも引き継がれる可能性があるのか?
現時点(2021年9月)では、まだわかりません。
なぜならば、国立中学の入試問題は、もともと知能テスト的な傾向が強く、筑波大附属にも、従来からその傾向は見られたからです。
さらには、「統計」は、小学校の学習指導要領で強化されている上、大学入試の新傾向とも一致しているからです。
学校休校問題が生じない年度においても、本年度の傾向が引き継がれる可能性は十分にあります。
よって、筑波大附属の受験生は、公立中高一貫校の適正試験対策を、一部取り入れる必要があると思われます。
特に「統計リテラシー」を身につける必要があります。
「統計リテラシー」とは、式と計算で厳密な数字を求めることとは別に、
といったことに対する理解力です。
さらには、それらを文章で表す能力です。
そうだとすると、一般的な私立中学と併願する場合、勉強時間の配分が重要なカギになります。
以上、出題傾向については、ある程度引き継がれると予想しますが、問題量については、もう少し減少する可能性があります。
筑波大附属中学は、科目別の受験者平均点、合格者平均点を公表していませんから、推測するしかないのですが、本年度の算数の平均点は下がっている可能性が高いです。
あまり下がり過ぎると、入学試験の趣旨を損なうことになります。(全員が0点の場合=算数が試験科目にない場合、に近づきます)
ですから、問題量はもう少し減少する可能性があります。
ただし、2022年度の受験生は、問題量が減少しない場合に備えて、時間配分の検討をしておきましょう。
自分は、どのタイプの問題が得意で、どのタイプが苦手、あるいは時間がかかるかということを、よく考えて、取る問題、捨てる問題を選択しましょう。
なお、本年度の筑波大附属中学に限らず、出題傾向が急に変わる可能性は、どの学校にも、常にあります。
レッツ算数教室では、当ホームページ内
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の中で、対策について、さらにくわしくご説明しています。