目次 |
「傾向」 |
1、概要 |
(1)入試結果 |
(2)出題分野 |
(3)難易度 |
2、各論(大問1~4) |
「対策」 |
1、概要
(1)入試結果
栄光2021年算数は、例年(ここ数年)通りの出題傾向でした。難易度はやや上がっています。
近年、各学校で問題文の長文化が進み、栄光もその流れの中にあります。
長いと言っても、文字数が多い場合と、図面や資料がかさばっている場合とがありますが、本年は、各問題とも、図面が多く、文字を読み、図面を確認し……のくり返しです。
これもまた、総合学習的な能力を試す一環で、柔軟な対応力が求められています。
学校公表の受験者平均点は、70点満点中、34.0点(48.6%)、合格者平均点は43.8点(62.6%)。
長文である上に、作業量の多い問題が並び、厳しい点数となっています。
(2)出題分野
「立体図形」「平面図形」「場合分け」「数の性質」など、栄光らしい分野から出題されています。
平面図形以外のほとんどの問題で、「場合分け能力」が試されています。
栄光の出題傾向通りです。
また、受験知識や受験テクニックのようなものは、あまり見られず、準備してきたことが、直接役立つことは、あまりありません。
(3)難易度
本年度は、やや難化した印象です。
大問1の「サイコロの目の向き」は、かなり高度な立体感覚の問題。
大問2の(3)は、どうかすると2次方程式。(4)は、作図が難解。
大問3は、理論はそれほど難しくありませんが、相当に手間がかかります。
大問4(3)(4)も、書き出すのが大変です。
本年度は、センスと、大量に書き出すスピードが問われた年でした。
「ひらめき」と「根性」を兼備していないと、高得点は難しいでしょう。
「出題分野&難易度マップ」を掲載致します。(難易度はレッツ算数教室の分析によります)
Aが最も易しく、BCDEFの順に難しくなっていきます。
出題分野&難易度マップ | ||
大問1 | ||
(1) | 立体図形 | C |
立体図形 | D | |
(3) | 立体図形 | D |
(4) | 立体図形・場合の数 | E |
大問2 | ||
(1) | 平面図形・移動 | C |
(2)① | 平面図形・移動 | D |
(2)② | 平面図形・移動 | D |
(3) | 平面図形・移動 | E |
(4) | 平面図形・移動 | F |
大問3 | ||
(1) | 規則性 | C |
(2) | 規則性 | D |
(3) | 規則性 | D |
(4) | 規則性 | E |
大問4 | ||
(1) | 数の性質 | C |
(2) | 数の性質 | E |
(3) | 数の性質 | E |
(4) | 数の性質 | F |
ABがありませんでした。EFの問題以外がすべてできると、ほぼ合格者平均点となります。
それでは、順に見ていきましょう。
2、各論
大問1「立体図形」
2の目、3の目は、「右上がり」「右下がり」で区別します。これで、(1)(2)は乗り切れるでしょう。
(3)は、いかにもサイコロが➡の順に転がっていったような印象を受けますが、そのように考えると、答えがありません。
問題文を注意深く読むと、サイコロを「転がした」ではなく「ふった」と書いてあります。
(4)は、(3)を大いに利用します。
サイコロの向きを、頭の中で自由自在に変えられる人は、ほとんどいませんから、そのような芸当はできなくても大丈夫です。
その代わり、サイコロの向きをチェックするための、自分なりの目印を、確立しておきましょう。
大問2「平面図形」
(1)(2)は、受験知識の問題です。受験生の皆さんは、類似問題を解いたことがあると思われます。
(3)は、(1)(2)で書いた図面を見ながら、正方形の一辺の長さを□として式を立てると、2次方程式になります。
でも、この2次方程式は、1次の項が左辺と右辺で打ち消し合う特殊な2次方程式で、「解の公式」や「因数分解」を知らなくても、解ける仕組みになっています。
おそらく、出題者は、2次方程式ではなく、図形的な解き方を予定していたと思われます。
でも、結果的に、2次方程式を立てて、式を整理した方が、はるかに簡単に解けてしまいます。
かつての栄光学園は、方程式で解こうとすると、かえってドツボにはまる問題を、出題していたのですが、このあたり、変化のきざしなのか、それとも、たまたまなのか、注目です。
(4)は、図のかき方が、とても難しいです。
正三角形も円も、「対称性」を備えた図形ですから、これを利用して図をかくのですが、厳密なところまで、正確にフリーハンドでかくのは、きわめて厳しいでしょう。
最大のポイントは、円の接線と正三角形の辺が重なっているときは、正三角形は横すべりして、それ以外のときは、円運動する、という点です。
でも、円の接線を意識するのは、微積分の勉強をしたことがある大人の知恵で、小学生には厳しいでしょう。
正答率は非常に低かったのではないかと推察します。
大問3「場合分け」
本問は、出題分野の単元名をどうするか、迷う問題でした。
「ルール指定問題」でもあるのですが、ひたすら場合分けすることが明白なので、「場合分け」としました。
要するに、Bテープの透明な部分の個数が1個の場合、2個の場合、3個の場合……と、ひたすら場合分けして、矛盾が起きるものを除いていくという、ただそれだけです。
(1)(2)あたりは、それほど大したことはありませんが、(3)はやや負担、(4)は時間がかかり過ぎるので、パス、というのが、平均的な合格者の実情と思われます。
大問4「数の性質」
(1)は、練習。(2)は、いかにも栄光学園らしい、センスで解く問題です。
気がついた人は、すぐ解けたでしょう。
(3)は、根性書き出し。けっこう手間がかかります。
(4)は、(2)を利用して、7つのうち真ん中の数が4の倍数(つまり、素積数ではない)であることを見抜く、という、栄光らしいセンスが光る問題ですが、それに気がついても、そのあとで、根性書き出しが待っています。
2021年のラスト問題は、センスと根性のハイブリッド型。ニューモデルの登場です。
これが、ここ数年の栄光学園を象徴しているように思われます。
神奈川県の男子校は、栄光学園とS中学が、2トップです。
栄光の入試問題は、センス一発で軽く解ける問題が多く、対してS中学は、秀才向きのヘビーな問題を出題しています。と、言われてきました。
でも、ここ数年の栄光学園の入試問題を見ていると、これら従来の認識を、改めなければなりません。
栄光学園は、大きく変わろうとしているように感じられます。
それは、センスを必要とする問題を出題しない、ということではなく、センスで解ける問題と、努力を要するヘビーな問題、あるいは、両者を融合した問題をすべて出題する方向への変化です。
塾、予備校が精緻(せいち)を極めたカリキュラムで受験対策を行う現代の大学受験は、センスだけでは乗り切れません。
コツコツ受験勉強に励む姿勢が、強く作用します。
栄光学園が、この点をふまえ、受験生に求める資質を、軌道修正しつつあるのではないかと、推察します。
受験知識や、受験テクニックを多数出題するということはありませんが、コツコツ調べ上げていくタイプの問題が増え、忍耐力、注意力が試されています。
センスは良いが、忍耐力、注意力に欠けるタイプの人は、合格が難しくなってきました。
栄光学園=天才型、S中学=秀才型、といった、ネット上のステレオタイプの分類は、変わりつつあります。