中学受験・算数では、「比」が大活躍します。
「比」を使うと、計算量を大幅に減らすことができます。
そればかりか、方程式では解きにくい問題が、あっさり解けることもあります。
そのため、「~を1とすると」といった解き方が多くの問題に使われています。
たとえば仕事算で、「全体の仕事量を1とすると……」とやりますね。
ところが、この「比」を使った解き方には、思わぬ落とし穴があります。
その一つが、「比のかけ算」。
次の問題を見てみましょう。
「ある長方形のたての長さと横の長さの比は2:3、面積は24㎠です。この長方形のたてと横の長さを求めなさい。」
ようし、比を使って解くぞ~!
たての長さを②、横の長さを③とする。
長方形の面積は、たて×横。
②×③=⑥=24
①=4
たて②=8cm、横③=12cm
できました!
では、確かめてみましょう。
8cm×12cm=96㎠
あれ、おかしいな……24㎠のはずなのに……
うわぁー。どこでだまされたんだぁー?
誤りの原因は「②×③=⑥=24」の部分です。
X(エックス)を使って書けば、
2X・3X=6・X・X=24
X・X=4
X=2
よって、たて=2X=4cm、横3X=6cm。
確かめると、4cm×6cm=24㎠
こちらが正解となります。
さて、このような問題を見せられると、比を使って解くのが怖くなってしまいます。
「他にも、思いがけない落とし穴があるのではないか?」
と、ぶるってしまいます。
5年生になると、比の勉強が始まります。
「比は難しい……」
と感じて、それまで得意だった算数が苦手科目になってしまう子が、後を絶ちません。
その原因は、比を使った解き方を十分理解することなく、何となく先生のマネをしているところにあります。
仕事算を例にとりましょう。
先生が
「全体の仕事量を1としましょう」
と説明し始めたとき、小学生の私は、
「どうして1と決まっているわけではないものを、勝手に1と決めつけていいのだろう?」
と、疑問に思ったものです。
「もし、箱を10個運ぶ仕事なら、全体の仕事量は10ではないのか?」
「もし、あんパンを24個食べる仕事だったら、全体の仕事量は24ではないのか?」
「そもそも仕事って、何のお仕事?」
「人には言えない、悪いこと?」
謎のお仕事を相手に、悪戦苦闘したものです。
「でもまあ、仮定して解く、ということなら、一応最後まで説明をきいてみるか」
と思い、きいていたのですが、結局
「もし1でない場合はどうなるか?」
という説明はありませんでした。
この点は非常に気になり、仕事算を解くたびに「罪悪感」に悩まされていました。
そこでどうしたか、というと、私は自分で試してみたのです。
「全体の仕事量を2としたら、どうなるか?」
「3としたらどうなるか?」
「4としたらどうなるか?」
不思議なことに、答えは必ず「1」としたときと同じになりました。
その理由を探るため、1つ1つの式を追いかけて比べてみました。
すると、
あたりまえですね。
すると、答えも2倍、3倍、4倍になるはずではないか……?
ところが、最後の式は「割り算」
「全体の仕事量」÷「1日あたりの仕事量」
ここで、分母、分子がともに2倍なら、約分して、答えは元と同じ。
分母、分子がともに3倍なら、約分して、答えは元と同じ。
つまり、「比の値」は一定。
「なるほど、だから全体の仕事量を1としても、大丈夫なのか」
と、納得しました。
それからは、問われているのが「比の値」なのか、「具体的な量~㎠など」なのか、よく観察して、比を使っても大丈夫な問題かどうか、用心深く厳密な注意を払うようになったのです。
「比」はとても便利な解法ですが、十分な理解を伴っていないと、大失敗します。
くれぐれも「解法暗記」に走らないよう、心がけましょう。
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