共立女子中学の算数は、例年、大問6~7問で、構成されています。
大問1は計算問題。大問2は、様々な分野からの小問群。大問3は、それぞれテーマをもった応用問題が並んでいます。
順に見ていきましょう。
大問1の計算問題は、3~4問。肩慣らし程度の簡単な問題もありますが、中には、かなりの「工夫」「知識」を求められるものもあります。
たとえば、2016年B大問1(4)。「けた入れ替え」です。さらには、3×37=111の知識(有名です)。これらを知っていると、計算が速く、正確になります。
そうかと思うと、2017年B大問1(3)。「けた入れ替え」に見せかけて、実はそうではない。
大問1の計算問題から、かなり仕掛けてきます。
2017年A大問1(4)は、どうでしょうか。9をこんなにたくさん足したら、繰り上がりに次ぐ繰り上がりで大変です。これは、10+100+1000+10000+100000を計算してから、5を引きます。
2017年C大問1(1)は、キセル算。解き方は、前年度B大問7の応用問題として、学校側が十分に説明しています。本来、応用問題ですが、冒頭の計算問題として、出題されています。
このように、計算問題でかなりの工夫を求めてきますが、上手に工夫すると、手間はかかりません。
つまり、共立は、計算力を重視していますが、その計算力は、工夫する力であり、単純で手間がかかるだけの計算力ではありません。
次は、大問2の小問群です。
ここでは、毎度おなじみの一行題が、くり返し出題されています。
「濃さ(食塩水問題)」「つるかめ算」「仕事算」「売買損益算」「等差数列の和」「相当算」「年齢算」などが並んでいます。
大問3以降の応用問題の出題にも、様々な工夫が見られます。
まず、定規を使う問題。(ゆるい問題)
普通、入試で定規を使う場合は、作図問題で、定規は点と点を結ぶため以外には、使えませんが、共立では、長さを測るためにも使えます。
そして、この測り方が、結構ゆるくても許されます。問題文には、「およそ何平方センチですか。最も近いものを次のア~オの中から1つ選び、記号で書きなさい」となっていたりします。
このような問題の出題意図は、どこにあるのでしょうか?
算数(数学)は、人間が頭の中で考えだした論理体系で、机の上だけで考えだされたもの、というイメージもありますが、今から何千年も昔の古代エジプト人が円周率を測定したときなどは、実際にロープで円を作り、長さを測ったそうです。
あるいは、円の面積を測るには、レンガを円形に敷き詰め、その重さを測ったり、レンガを砕いて、長方形に並べ直したりしていたようです。
理論以前に、あるいは理論と並行して、原始的な実験をしていたわけです。
共立の計算問題が、工夫を強く求めていることと考え合わせると、共立の出題方針、教育方針には、自ら工夫して、実験して、新しいものを作り出せる人を育てよう、という意図が感じられます。
そして、新しいものを作り出す過程では、アバウトでゆるい思考力が必要であることを、よく理解されているのだと思います。
このような意図は、受験生に自分で数列を作って説明させる「創作問題」(2017年C大問4(2))などにも、表れています。
2016年から導入された「長文誘導問題」も、特徴的です。
他、多数。
普段、考えたこともないようなテーマについて、長文の問題文の誘導にのって、考えを進めていきます。
暗記式の勉強では、対応できません。
このような問題は、2020年の大学入試改革を念頭においたものでしょう。多くの学校が取り入れ始めており、増加傾向にあります。
その他の特徴として、分野的には、「グラフ読み取り問題」「規則性」が多いことがあげられます。
実験して、測定して、規則性を発見しようということでしょうか。
難易度は、部分的にかなりの難問も含まれますが、全体的には、標準レベルのものが多く、その結果、合格者平均点は高めです。
過去問の検討が有効です。
大問1の計算問題では、過去問演習によって、工夫の要領がつかめます。
また、前述の2017年C大問1(1)のように、前年度の応用問題が、翌年の計算問題として出題されることもあります。
大問2の小問群は、毎年毎回、数字替え問題や、それに近い類似問題が出題されています。
ユニークな問題が出題されるとしても、最低限、押さえるべき知識は必要です。
ここは、基礎中の基礎なので、過去問とともに、塾のテキストの基本問題をよく勉強して、高得点をかせぎましょう。
ただし、基本問題だからといって、くれぐれも、暗記に走らないように、気をつけましょう。
このレベルの問題は、暗記でも解けてしまうだけに、暗記に頼ると、致命的に伸び悩みます。
ここでの理解が、応用問題やユニークな問題に対応する力につながっていきます。
大問3以降の応用問題は、先ほど述べた「定規を使う問題(ゆるい問題)」「創作問題」「長文誘導問題」などに慣れるためにも、過去問演習が有効です。