筑駒・算数2020年度は、出題分野、難易度ともに、例年通りでした。
大問1は「場合の数」プラス「3段つるかめ」。
大問2は「場合の数」プラス「数の性質」。
大問3は「規則性」(タクシー料金)。
大問4は「平面図形」(面積)。
筑駒の過去問にヒントのある問題も出題されています。
「出題分野&難易度マップ」を掲載致します。(難易度はレッツ算数教室の分析によります)
Aが最も易しく、BCDEの順に難しくなっていきます。
出題分野&難易度マップ | ||
大問1 | ||
(1) | 場合の数 | B |
(2) | 場合の数 | B |
(3) | 場合の数 | E |
大問2 | ||
(1) | ルール指定・場合分け | B |
(2) | ルール指定・場合分け | E |
(3) | ルール指定・場合分け | E |
大問3 | ||
(1) | 規則性 | C |
(2) | 規則性 | C |
(3) | 規則性 | D |
大問4 | ||
(1) | 平面図形 | C |
(2) | 平面図形 | D |
(3) | 平面図形 | E |
大問4の(3)が難問ですが、それ以外は、時間さえかければ、誰でも解けます。
まともに解くと、膨大な時間がかかるところを、規則性や効率的な解法を見つけて、いかに素早く解くか?という競争です。(このあたり、いかにも筑駒風です)
では、どのような準備をしていれば、2020年度・筑駒に合格できたのでしょうか?
また、その中から、来年度以降にも役立つ対策を抽出すると、どうなるでしょうか?
ごいっしょに考えていきましょう。
(各問題の解法分析の後、ページの下の方に、対策まとめがあります。)
大問1
(1)(2)は、簡単すぎて拍子抜けしますが、今は、緊張が極限状態に達している、危険な時間帯です。
「いつもなら、当たり前にできることが、できないかもしれない」
という客観的自己分析のもと、慎重にクリヤーしましょう。
(3)ようやく、本題に入ります。
当然、(1)(2)が易しかった分も上乗せした難問です。
当然、覚悟はできていますよね。
もちろん、(3)をとばして、さっさと大問2へ進む「食い逃げ」もアリです(笑)。
食い逃げしないとすると、まず、47、97、147という半端な数を、どう平(たいら)にするか?
すべてに3を加えると、50、100、150となり、(2)とそろいます。(3段つるかめ)
すべてから47を引くと、0、50、100となり、(1)とそろいます。(2段つるかめ)
どちらで解いても大差ありませんが、結局「3段つるかめ」は「2段つるかめ」に持ち込むことになります。
「次元を下げて考える」という算数の発想法ですね。
よって、47引くことにしましょう。
すべて47円引きにするので、合計金額も、その分安くなります。
では、いくら安くなるかというと、
47円×(買った個数)
です。
でも、買った個数がわかりません。
ここで「1の位」に注目すると、すべて7円なので、何個買っても、代金の1の位は、7の倍数の1の位です。
1499円の1の位が9なので、買った個数は7個、17個、27個、37個……となります。
今度は、きりがありません。
そこで、範囲をしぼる必要が生じます。
最高価格147円×7個=1029円
最低価格47円×37個=1739円
なので、7個ではどうやっても1499円には届きません。
37個ではどうやっても1499円をオーバーしてしまいます。
よって、候補は17個、27個にしぼれます。
ここで、ようやく2段つるかめに持ち込めました。
17個の場合、値引き合計は
47×17=799円
代金合計は
1499-799= 700円
個数合計には、注意が必要です。
品物X、Y、Zをそれぞれ少なくとも1個は買い、合計17個ですから、50円の品物Yと100円の品物Zを、合計16個以下、少なくとも1個ずつは買い、代金合計は700円です。
(Y、Z)の組み合わせは、(2、6) (4、5) (6、4) (8、3) (10、2) (12、1)の、6通り。
個数合計が27個の場合、代金合計は
1499-49×27=230円
となり、50円と100の組み合わせでは作ることができません。
答え、6通り
大問2
(1)練習(省略)
(2)ここで、「もとの数」の百の位、十の位、一の位、3つの数字のパターンと、「合計数」の関係を、まとめておきましょう。
3つの数字がすべて異なるとき |
ABC |
+ACB |
+BAC |
+BCA |
+CAB |
+CBA |
合計(A+B+C)×2×(100+10+1) =(A+B+C)×222 |
2つの数字が等しいとき |
AAB |
+ABA |
+BAA |
合計(A×2+B)×(100+10+1)=(A×2+B)×111 |
すべての数字が等しいとき |
AAA=A×(100+10+1)=A×111 |
「合計数」が999となるときは、
(A+B+C)×222=999(不適)
(A×2+B)×111=999
A×2+B=9……①
A×111=999
A=9……②
①のとき(A、B)の組み合わせは、(0、9) (1、7) (2、5) (3、3) (4、1)
このうち、100~199までの整数を作ることができるのは、数字の「1」を含むものだけ。
すなわち、(1、7) (4、1)
並べ替えて、117、171、144
②のとき、「もとの数」は999となり、100~199に収まらず、不適。
答え、117、144、171
(3)
3つの数字がすべて異なるとき、
(A+B+C)×222>2020
A+B+C≧10
1を含む異なる3つの数(ABC)の組み合わせは
(109)(127)(128)(129)(136)(137)(138)(139)(145)(146)(147)(148)(149)(156)(157)(158)(159)(167)(168)(169)(178)(179)(189)
の23通り。
10の位と1の位を入れ替えた整数が2個ずつ作れるので、「もとの数」は46個。
2つの数字が等しい時、
(A×2+B)×111>2020
A×2+B ≧19
1を含む(AB)の組み合わせは(91)のみ。
よって、「もとの数」は199の1個。
46+1=47
答え、47個
大問3
タクシー料金=規則性の問題です。
(1)
練習。見慣れた数字替え問題です。全員が正解したかもしれません。
(2)
「時間に関する料金」は、めずらしいですね。
ここで、料金体系が「距離」と「時間」の2本立てになっている点を、どのように処理するか?
大問1では、「3段つるかめ」を「2段つるかめ」に改造しました。
「次元を下げる」
という発想です。
タクシー料金も、2本立ての料金体系を1本化できないか、考えます。
すると、このタクシーは「つねに時速42km」という条件が、目にとまります。
「3分80円」ということは、
42000m÷60×3=2100m
すなわち、2100mで80円加算、ということになります。
これで、料金体系を「距離」に1本化できました。
これで問題解決です。
本問も、正答率はきわめて高かったと推測します。
(3)
(2)で、7500mのとき2580円という結果が出ています。
これを利用しましょう。
(3700-2580)÷80=14
よって、あと14回加算。280mごとの加算が10回のとき、何m進み、2100mごとの加算がどうなっているか、調べます。(あとは簡単です)
おおよその見当をつけて、大づかみに計算で求め、最後の端数は、「根性書き出し」というのが、効率的です。
このあたり、筑駒・平成4年大問2はじめ、様々な過去問があるので、練習しておきましょう。
大問4
本問は、筑駒・平成15年大問1の応用問題です。
向かい合う三角形の面積合計は、長方形の半分であることを知っていれば、話がはやいです。
最小アと最大エが向き合い、イとウが向き合い、「ア+エ=イ+ウ=長方形÷2」となります。
(1)
アの面積をアとし、面積の差を①とします。
イ=ア+①
ウ=ア+②
エ=ア+③
長方形の面積は2㎡なので、
ア×4+⑥=2㎡
1/6×4+⑥=2
①=2/9 ③=2/3
エ=1/6+2/3=5/6㎡
答え、5/6㎡
(2)
差の①=1/6
⑥=1
ア=(2ー1)÷4=1/4
イ=1/4+1/6=5/12
PQ=5/12×2÷1=5/6
PR=1/6×2÷1=1/3
QR=5/6ー1/3=1/2
答え、1/2m
(3)
「点Pとして考えられるすべての位置」と言われても、難しいです。
このような時は、「極端な場合」を考えて、おおよその見当をつけ、その後、その予想に論理的裏づけを与える、という、高等戦術を用います。
もう一度、4つの三角形の面積を整理します。
ア=ア
イ=ア+①
ウ=ア+②
エ=ア+③
ア+イ+ウ+エ=2㎡
極端な場合1
①=ゼロ
「差がない」というのは、問題文の条件に反しています。
「アイウエの面積はすべて異なる」と書いてあるからです。
でも、差が限りなくゼロに近づく時、点Pは、限りなく長方形のど真ん中(対角線の交点)に近づきます。
そこで、仮に、差がゼロの場合も含むとすれば、点Pは長方形のど真ん中にいます。
「問題文を、解きやすい形に、改造してしまう」
というワザを使うのです。
不都合は、あとで修正します。
極端な場合2
ア=ゼロ
今度は、三角形PAB(ア)がどんどんつぶれ、限りなくペチャンコ(面積ゼロ)になった場面を、仮定します。
⑥=2㎡なので、①=1/3㎡
つまり、三角形PDA(イ)は、面積1/3㎡、底辺AD=1mなので、高さは2/3mになります。
このとき、点Pは、AB上のAから2/3mの位置にあります。
(点Pが右側に寄っていれば、イは三角形PBCとなり、左右反対のことが起きます。)
さて、2つの極端な位置が見つかりました。ここで、
「はたして、これを直線で結んで良いものか?」
大いに悩みます。
本問は、2020年・筑駒算数の最後を飾る問題で、最も難しい問題です。
正答率も、きわめて低いと推測します。
時間がなければ(ほとんどの人はないでしょう)、
「えいやっ」
と運を天に任せて、直線で結んでしまえば、これが正解なのですから、笑いが止まりません。
(斜線部分は答えに含めないよう、白丸にしておきましょう)
当てカンの勝利となります。
本番に限って、これでOKです。
過去問演習で勉強中の人は、もう少し考えましょう。
まず、点Pが長方形のど真ん中にある場合、4つの三角形の面積は、当然、等しくなります。
ここから、左下(または右下)へ移動します。
どのように移動するかというと、
アとイの差がイとウの差に等しくなるように移動すればよい
ということになります。
ここで、ようやく(2)問題図の「斜線部分」のありがた味が、わかります。
これまで、
「(2)は、何か変な問題だな……」
と思っていたでしょう。
これは、
点Pが左へXm移動すると、イの面積がX×1÷2=X/2㎡小さくなる(逆に、ウの面積はX/2㎡大きくなる)
というヒントを出していたのです。
ということは、
点Pが下へYm移動すると、アの面積はY×2÷2=Y㎡小さくなる
ということも、わかります。
ウーイ=イーア |
ウの増分+イの減分=アの減分-イの減分 |
X/2+x/2=Y-X/2 |
Y=(X/2)×3 |
X:Y=2:3 |
つまり、
点Pが長方形の中心から、下へ3移動したら、左(または右)へ2移動すれば、条件をみたす
ということが、わかりました。
これで、先ほどの予想が正しいことが、証明されました。
他にも、
4つの三角形の底辺は、すべて1mまたは2mという「定数」なので、面積は1次式で表すことができ、点Pの軌跡は2次曲線にはならない
という「ズル技」もあります。
最近は、高校数学まで勉強している小学生が、ほんの一部いるので、ご参考までに。
対策まとめ
ページ冒頭の難易度表からも明らかですが、小問ごとの難易度に、大きな開きがあります。
難問や、作業量の多い問題は保留にして、取れるところからとっていきましょう。
また、算数の発想法(タップ・クリックできます)が、あちこちで有効です。
など、色々出てきました。
解法暗記に走ることなく、これらの発想法を身につけ、自分で考えられるように、勉強しましょう。
(青い文字をタップ、クリック) |
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