1、概要
桜蔭中学2021年度・算数は、例年通りの出題傾向、難易度でした。
(1)出題分野
近年の桜蔭は、
に特徴があります。
調べる問題というのは、問題文の条件に当てはまるものを、書き出す問題で、「場合の数」の一分野です。
ただ、場合の数は、積の法則など計算でスマートに求められるものも含みますが、桜蔭は、地道に書き出さなければならない問題が主流です。
また、速さなどの計算も、理論的には易しくても、計算が半端な分数になり、苦戦するものが、多く出題されています。
2021年度の問題も、この流れに沿うものです。
(2)難易度
一口に難問といっても、
の2種類があります。
桜蔭は、後者の意味の難問が多く出題されています。
問題文を読めば、すぐ解法が思い浮かぶという意味では、簡単ですが、時間内に計算を実行するには、それなりに頭を使います。
よって、そのような問題も、難易度が高い問題に、分類しておきます。
「出題分野&難易度マップ」を掲載致します。(難易度はレッツ算数教室の分析によります)
Aが最も易しく、BCDEの順に、難しくなっていきます。
出題分野&難易度マップ | ||
大問1 | ||
(1) | 計算 |
A
|
(2)① | 規則性 | C |
(2)② | 規則性 | C |
(3)① | 約数の和・個数 | D |
(3)② | 約数の和・個数 | D |
(3)③ | 約数の和・個数 | D |
(3)④ |
約数の和・個数 | D |
大問2 | ||
(1) | 場合の数 | E |
(2) | 場合の数 | E |
大問3 |
||
(1) | 水そうグラフ | C |
(2) | 水そうグラフ | C |
(3) | 水そうグラフ・場合の数 | D |
(4) | 水そうグラフ・場合の数 | D |
大問4 | ||
(1) | 点の移動 | B |
(2) |
点の移動 |
C |
(3) | 点の移動・つるかめ算 | E |
それでは、順に見ていきましょう。
2、各論
大問1
(1)「計算問題」
(2)「規則性・カレンダー」
この2問は、基本中の基本問題です。
(3)「約数の和・個数」
約数の和・個数は、公式で求めます。本来、高校数学で勉強する公式なのですが、中学受験でも常識となりました。
①~④まで、基本的には、公式をあてはめつつ、コツコツと調べます。
当然、手間がかかります。
その中で、かろうじて特徴的なのは、②。
約数の個数が3個の整数で、これは素数の平方数です。
大問2「場合の数」
(1)は、図形の対称性を利用しながら、調べていきます。
どのように場合分けすればよいかは、問題文の冒頭で、教えてくれていますから、この誘導に乗っていけばいいでしょう。
ただし、作業量は多く、似たような図面が大量に並び、どれとどれが同じか、異なるか、見分けがつきにくい、という難しさがあります。
時間をかけ、丁寧に調べれば、簡単な問題ですが、時間内に解くのは、容易ではありません。
(2)は、白黒反転させれば、(1)までに調べたことが使え、基本的に2倍すればよいのですが、白黒同数のときには、2倍すると重複が生じてしまいます。
この点に注意が行き届けば、(2)は簡単です。
大問3「水そうグラフ・場合の数」
算数的な内容は、簡単です。
ただ、本問はとても重要な意味を含んでいます。
たとえば、2020年の大学入試改革の影響で、大学入試国語の問題が、大きく変化しています。
従来は、本文を一つ読んで、それに対して答えるというスタイルだったのが、本文(小説)と、その解説(文芸評論)を二つ並べ、両方を読み比べながら答える、というスタイルが流行しているのです。
これは、複数の資料を見比べながら、総合的に判断する能力を試すものです。
本問は、中学入試算数ですが、「表」「図」「グラフ」3つを見比べる問題で、なおかつ問題文もけっこう長い、ということで、大学入試の変化の影響を受けていると思われます。
そのような意味で、重要です。
大問4「点の移動・つるかめ算」
本問も、理論は易しいが計算が大変という問題です。
円周率を3.1にしているので、計算の煩雑さを回避しているように見えますが、逆です。
せめて、円周率を3.1にしなければ、とても手に負えない問題なのです。
途中式は分母が55と77の分数を通分したり、とにかく数字が半端です。まともに計算すると、ミスの確率が高くなります。
ただし、上手に約分約分約分すると、手品のように、簡単になります。
本問の出題分野は「計算の工夫」とでも言った方が、的確かもしれません。
「傾向」で何度も述べているように、手間のかかる問題が多数出題されており、時間との勝負といえます。
その中で、「対称性」を利用して、書き出す効率を上げたり、「計算の工夫」によって、効率を上げることが、最も重要な対策です。
ただし、「計算の工夫」といっても、計算ドリルで達成できるようなものではありません。
計算ドリルは、「与えられた」計算問題を、工夫する練習です。
対して、桜蔭で必要な「計算の工夫」は、「自分で」計算しやすい式を立てる工夫です。
大きな違いがあります。
当ホームページ内
で、両者の違いをくわしく説明しています。
また、複数の資料を見比べながら、総合的に考える問題として、進行グラフや、水そうグラフがありますが、今後は、「統計資料」も重要になってくるでしょう。
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