白百合学園中学の算数は、例年、大問5問で構成されています。
大問1から、いきなりテーマをもった応用問題が並んでいます。計算問題は出ませんし、様々な分野からの小問群もありません。
このような場合、難しい出題が予想されますが、実際、その通りです。
1、頻出分野について
「平面図形」「立体図形」「速さ」「割合と比」が、よく出題されます。
「平面図形」は、「多角形・円」「面積・角度」いずれも、出題されます。
「立体図形」は、中学受験で流行の「立体切断」はそれほど出題されず、オリジナルの問題になっています。
「速さ」は、文章題的な出題と、進行グラフを使った図形的な出題の双方が、出題されます。
他には、「数の性質」「仕事算」なども、出ていますが、出題数が大問5問と少ないので、出題分野でヤマを張るのは、危険です。
2、難易度について
見かけ以上に難しいです。
問題文は短めです。普通、短い問題は、一行題のように、易しい場合が多いのですが、白百合の問題は、短いのに、結構手こずるのです。そのギャップで、受験生を揺さぶるわけです。
この点は、多くの女子校と、かなり傾向が異なっています。
たとえば、東洋英和は、受験生に精神的な負担をかけないように、易しい計算問題から始めて、その後も、易しい問題から難しい問題へと、徐々にステップアップしていきます。受験生の多くが解けないような難問は、あまり出題しません。出題するとしても、難問の配置場所を固定するなどの、配慮があります。
吉祥女子は、難問も出題しますが、その場合には、易しい小問1、小問2から、親切に誘導してくれます。
ところが、白百合では、難しい大問が、小問に分かれていないこともあります。すなわち、ヒント無しで解きなさい、ということです。
算数が苦手な受験生にとっては、精神的にかなり厳しいと思います。
また、内容的にも、見た目と実際が異なる問題が出題されます。
たとえば、2016年大問4。「比」の問題です。
この問題は、普通、「池に2本の棒(ぼう)を立てる問題」として出題されるのが、「お約束」になっています。お約束どおり出題してくれれば、何の変哲もない易しい問題です。
ところが、「A君、B君が問題集の宿題を進める問題」という形をとり、「9分の2、4分の1、21分の10」といった条件を示しているため、あたかも、「整数問題」であるかのような雰囲気を醸(かも)し出しています。
問題文をパッと見た瞬間には、「問題集のページ数は、4と9と21の公倍数?」と思ってしまう可能性もあるわけです。
もし、本問を整数問題であると判断してしまったら、ドツボにはまるでしょう。
中学受験算数は、数学と異なり、問題文の「物語性」を利用して解く面があります。「この物語のときは、○○算」というお約束が、ある程度、存在します。(受験テクニックの負の側面であり、困ったことではありますが。)
でも、白百合は、どこまで意図的かはわかりませんが、このお約束を逆用して、そのギャップで、難しい問題に見せることがあります。
「平面図形」「立体図形」「速さ」「割合と比」については、よく出題されることがわかっているので、塾のテキストで、十分勉強しておきましょう。
白百合の問題は、難しい問題でも、定番問題を少し応用すれば足りるものが多いので、努力は報われます。
それに加えて、白百合特有の難しさに、慣れておく必要があります。
まず、精神的には。
「見かけ以上に難しい」という覚悟をもって、本番に臨みましょう。
「易しそうな問題だと思って、解き始めたのに、なんか難しい。今日の自分は、頭がどうかしているのか?」と、混乱する場面が、普通にある、と肝に銘じておきましょう。
次に、技術面。
といったことも、普通にあります。
そのようなギャップをかいくぐって、正解に達するには、ふだんから、問題文の「物語性」に頼らず、論理構造を「抽象化」しておく必要があります。
「論理構造の抽象化」などというと、難しく聞こえるかもしれませんが、よくある例は、「つるかめ算」です。
「つるかめ算」で、本当に「ツルとカメ」が出てくるのは、4年生(?)で初めてつるかめ算を教わったときだけでしょう。
その後は、
などの「つるかめ算」を、解いてきたはずです。
それでも、あなたが、「この問題は、つるかめ算」と認識できるのは、論理構造が抽象化できているからです。
「つるかめ算」は、「論理構造の抽象化」ができているかどうかを試すのに、最も適切な問題の一つです。白百合でも、つるかめ算が好んで出題されています。
などです。
もっとも、「速さが途中で変わる問題は、つるかめ算」という覚え方は、いけません。そういうのを、「物語性に頼った解き方」といって、白百合では、通用しません。
「論理構造の中で、どの数字とどの数字が、わかっている時、隠されている時に、つるかめ算」
という理解が、必要です。