「算数の問題は、すぐ答えを見ないで、なるべく自分の頭で考えた方が、思考力がつくのはわかっています。でも、そうすると、やらなければならない勉強を、時間内にこなせません。」
「どうすれば良いでしょうか?」
よく、質問されます。
お気持ち、痛いほどわかります。
私が授業を行うときも、なるべく生徒様の頭が働くように、考える時間をとろうと心がけていますが、時間を取りすぎると、必要な問題数がこなせません。
つまり、翌週のテストは撃沈します。
別に、大手塾の毎週のテストで良い点数を取ることが最終目的ではありません。
ましてや、そのテストが「数字替え」の復習テストのタイプであれば、解法丸暗記で良い点数を取ったとしても、大した意味はありません。
それならば、点数度外視で、考える時間を十分とった方が、最終結果(入試の合否)は、良くなるのでは……
それは、理屈としては、わかっている。
でも、現実問題として、毎週のテスト成績が安定していないと、心配で心配でしょうがない……
自分で考える勉強ばかりで、本当に合格できるのか、心もとない。
悩むところです。
レッツ算数教室でも、この問題は徹底的に考えてきましたし、常に考え続けています。
そこで、この記事では、この問題に対する考えをご説明します。
たとえば、つるかめ算にも、基本形と応用問題があります。
どちらが難しいでしょうか?
常識的には、応用問題の方が難しいと考えられるでしょう。
では、少し質問を厳密にします。
つるかめ算の基本形を、ゼロから自分で考えるのと、基本形はさっさと教わった上で、応用問題を自分で考えるのと、どちらが難しいでしょう?
これは、基本形をゼロから自分で考える方が、圧倒的に難しいと、断言できます。
算数の問題は、たとえ基本問題であっても、解法をゼロからあみ出すのは、非常に難しいのです。
基本問題どころか、足し算、引き算の方法でさえ、自分であみ出すのには、何千年もかかるでしょう。(自分であみ出せれば、の話ですが)
どこかの発展途上の国では、数字は、1と2と「たくさん」の3種類しかない、という話をきいたことがあります。
たしかに、木の実を、王様と家来と召使いで分けるときには、これで十分ですね。
「0」の発見、すなわち、位取り記数法(10進法)の発見が、数学史上の大発見だった、ということを考えても、基本(と思われていること)が、いかに難しいかが、よくわかります。
ですから、つるかめ算の基本形のように、「公式」や「公式に準ずるもの」については、さっさと教わった方が効率的です。
ここで、ねばって考えても、
「下手の考え、休むに似たり」
に陥ります。
でも、ひとたび、つるかめ算の基本形を教わったならば、その応用問題を自分で考え抜く勉強は、力がつきます。
もし、考える時間を十分に取るとしたら、この部分でしょう。
以上の原理をふまえて、レッツ算数教室では、以下の提案をさせていただきます。
まず、たし算、ひき算、かけ算、わり算を習ったばかりの1~3年生は、つるかめ算のような基本知識を必要としない、「算数パズル」のような問題を、「自分で」考えるトレーニングが、有効です。
これは、必ずしも、「算数パズル教室」に通わなくても、市販のパズル本を買わなくても、大丈夫です。
中学入試問題の中に、小学校1年生でも取り組めるパズル問題は、結構出題されています。
時間無制限で、どんどんチャレンジしてみましょう。
4年生、5年生になると、ある程度の知識がないと解けない問題が、増加します。
基本形については、すぐに教わってしまった方が、効率的ですし、そうしないと、クラス分けテストなどで、撃沈するでしょう。
でも、まだ、入試本番までには、十分時間があります。
精神的にも、余裕があります。
そこで、ほどほどのレベルの問題については、自分でねばってねばって解き切る、という勉強も、取り入れるべきです。
私は、4年生の子(大手塾の全国模試でトップ10の常連)が、30分かかって、旅人算の難問(超難関校の過去問)を解き切ったのを、この目で確認しました。
(さすがに30分考えたあとは、かなりぐったりしていましたが。)
我こそは、と思う、算数少年少女は、30分ぐらい考え続ける勉強も、時々は取り入れてみてもよいでしょう。
さて、問題は6年生です。
6年生になると、算数といえども、おぼえなければならない知識が、激増します。(もちろん、丸暗記ではありませんが)
他教科の勉強も、大変になります。
5年生までのように、時間を気にせず、ひたすら考える余裕は、一般的にはないでしょう。
そこで、具体的に何分ぐらい考えるのが適切か、ということですが、入試の制限時間から逆算して、15~20分がよいかと考えています。
入試で最も重たい応用問題を出題する学校は、たとえば60分で大問4問です。
このうち70%程度とれれば、ほぼ確実に合格できます。
単純に大問1問を捨てて、残り3問を60分で解けばよいと考えれば(本当はもう少し複雑ですが)、大問1問あたり20分。
よって、20分考えても、手も足も出ない問題は、「捨て問」と判断できます。
捨て問でも、自分で考えれば、算数の実力はつきますが、時間も尽きます。
合格、という1点にしぼって考えると、このくらいが限界でしょう。
私自身は、6年生の時、最長2時間考え続けて、応用問題を解き切った経験があります。
でも、このような勉強が効率的だったか、今にして思うと、疑問です。(たまには良いでしょうが)
あなたの志望校の入試問題を確認して、1問あたり何分使えるか計算すれば、各自に適した「考える時間」が割り出せるのではないでしょうか。
ご検討ください。
ご健闘を祈ります。
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