開成 算数 対策 2020年


目次
「傾向」 
1、概要
(1)入試結果
(2)出題分野
(3)難易度
2、各論(大問1~4)
「対策」

傾向

1、概要

(1)入試結果

 

開成2020年・算数は、かなり難化しました。

 

  受験者平均点 合格者平均点
2020年 38.6  49.5
2019年 51.0 64.6
2018年 62.0 73.9
2017年 40.1 54.8
2016年 39.9 53.7

(開成中学ホームページより引用・算数85点満点)

 

(2)出題分野

 

「速さ・進行グラフ」「点の移動」「場合の数」「立体図形(切断)」から出題されています。

 

もっとも、大問1「速さ・進行グラフ」は、「場合分け」や「比」などの要素も含む「融合問題」ですし、大問3「場合の数」は「つるかめ算」も使用します。

 

(3)難易度

 

まず、全体的な難易度について。

 

開成中の算数は、問題数が少ないこともあり、難易度は、年度により幅があります。

 

2020年度は、難しい年でした。

 

2月1日に開成中を受験できるだけでも、大変な実力ですが(2月1日に冷やかし受験をする余裕のある人は、まずいません)、彼らの平均得点率が50%を割っているのですから、かなりの難問といえます。

 

では、すべての問題が難問だったか?というと、そうではありません。

 

大問1は、気がつくまでに多少時間がかかるかもしれませんが、きっかけをつかめば、単なる場合分けの問題。

 

大問2、大問3は、どこかで見たような問題。かなり手間がかかり、ミスも起きやすい問題ですが、理論的には、簡単です。

 

そして、大問4。これは、かなりの難問でしょう。ただし、開成・平成27年度大問4と似ており、これに気がつけば、絶対解けない超難問ではありません。

 

大胆な推測ではありますが、合格者の平均的な点の取り方は、大問2、3で満点近く取り、大問1で(完答は無理でも)部分点をもぎ取り、大問4は「お手上げ」といったところではないでしょうか。

 

大問1で面食らって、結局解けず、大問2、3の手間のかかる問題を、あせりまくってミスしてしまった人は、不合格になったように思います。

 

「出題分野&難易度マップ」を掲載致します。(難易度はレッツ算数教室の分析によります) 

 

Aが最も易しく、BCDEの順に難しくなっていきます。

 

   出題分野&難易度マップ
大問1 速さ・進行グラフ E
大問2     
(1) 点の移動 C
(2) 点の移動 D
(3) 点の移動 E
大問3    
(1)(ア) 場合の数 C
(1)(イ) 場合の数・つるかめ算 D
(2)① 場合の数 C
(2)② 場合の数 D
(2)③ 場合の数 C
(2)④ 場合の数 C
(2)⑤ 場合の数 C
(2)⑥ 場合の数 C
(2)⑦ 場合の数 D
(2)⑧ 場合の数 E
大問4 立体図形・切断 F

 

それでは、順に見ていきましょう。

2、各論(大問1~4)

 

大問1「速さ・進行グラフ」

 

本問の進行グラフは、難しい点が2つあります。

 

1つ目は、縦軸の距離が、スタート地点からの距離ではなく、「ロボットAとBの間の距離」を表している点。

 

2つ目は、縦軸の1目盛りが、何cmかわからない点。

 

1つ目は、難関校の進行グラフで、最近よく出題されるようになったので、ほとんどの受験生が、事前に対策していたと思われます。

 

ただ、出発後1~2分の間でグラフが一度ゼロになり、その後再び反発しているのを、どう考えるか、です。

  • 一瞬追いつかれたが、その後がんばって再びリードしたのか? 
  • それとも、追い越されたのか?

グラフだけだと2通りの解釈が成り立ちます。

 

そこで、カード①~④の動き方を確認すると、①③④については「毎分30cmで進みなさい……」としか書いてありません。すなわち、1分間の途中で速さが変わる可能性がありそうに見えます。

 

ここで、問題文の冒頭2行目「1分間ずつその指示に従って」を確認できた人は、その後も順調に解けたと思いますが、そこに気づかなかった人は、大混乱して、終わったでしょう。

 

カードの指示内容が最も重要ではありますが、そこばかりに目が行き、冒頭の、何気ない2行を忘れると、不合格。大変厳しいですが、そんな気がします。

 

もっとも、進行グラフが本問のような形になる場合、それらの多くは「追い越し」です。

 

当てカンで「追い越し」と考え、順調に解けた受験生は、本番に限って、結果オーライです。

 

でも、過去問演習として本問を勉強している人は、論理的にしっかり詰めて考えましょう。

 

さて、ここを無事にクリヤーして、1目盛りの距離の問題にまで進んだとして、ここでどうするか、です。

 

初めの1分間では、2目盛りの差がついた。

 

次の1分間では3目盛りの差がついた。

 

ということは、差の比は2:3。

 

0、30、45、60を組み合わせて作ることのできる「差」は、0、15、30、45、60で、このうち2:3の関係になりうるのは、30と45だけ。

 

これですべて解決です。

 

このあとは、かなり手間はかかりますが、グラフにあてはまるものを、片っぱしから書き出していくと、うまくいくものは意外と少なく、開成受験生であれば、何とかなるでしょう。

 

特に、差が「45」の組み合わせが「0と45」しかないので、答えが一気にしぼれます。

 

カードの「30、45、60」という数字を見たとき、「15の倍数だな」と気づき、「2:3:4」とおきかえた人は、「2目盛り、3目盛り、4目盛り」に気づきやすく、さらに効率的に解けたでしょう。

 

ちなみに、この「30、45、60」という数字。見覚えがないでしょうか?

 

そう、一組の三角定規の「内角」ですね。

 

でも、90がありません。

 

そういえば、カードの指示には30だけ2まいありました。

 

もしかすると、出題の先生は、はじめ三角定規を思い浮かべ、90を入れていたのかもしれません。

 

でも、そうすると、場合分けが多くなりすぎて、大変です。

 

そこで90をやめて、30を追加したのかもしれません。

 

「一組の三角定規の内角を組み合わせると、15の倍数が次々とできる(15の倍数しか作れない)」ということを覚えておくと、今後、何かの役に立つかもしれません。

 

大問2「点の移動」

 

本問は、1分あたりの移動角度(角速度)からの出題です。

 

しばしば見かける問題なので、開成受験生にとっては、お手の物でしょう。

 

開成・平成20年度大問4にも、どことなく似ています。

 

大問1を後回しにして、こちらから片付けるという選択も、あるように思います。

 

本問は、落とせません。

 

大問3「場合の数」

 

本問は、「場合の数」と「規則性」の融合問題です。

 

これも、よくある問題なので、落とせません。

 

問題文中の表に数字をうめながら、規則性に気づくよう、出題者が誘導しています。

 

この流れにうまく乗りましょう。

 

正答率は高かったと推測します。

 

大問4「立体図形・切断」

 

本年度、最も難しかった問題です。

 

どこが難しいかというと、床面で日の当たっている部分(図3の斜線部分)が、

  • 窓穴1のものか?
  • 窓穴2のものか?
  • 窓穴1と2が重なったものか?

ただちには、わからないという点です。

 

それどころか、

  • 窓穴1、2のうち、どちらか一方からは、日光が入ってこない

という可能性も、論理的にはあり得ます。

 

(もしそうだとすると、中学入試問題としては、かなり意地悪な出題、ということになりますが、大学入試問題であれば、普通にあり得ます。)

 

従って、太陽がどこにあるのかも、よくわかりません。

 

確かに、図3の斜線部分が斜めになっていることから、しかも、壁ABFEから3目盛り離れていることから、

 

「これは窓穴1から入った光で、太陽は南西(CEをEの方へ延長した方向)にありそう」

 

と、直観的にわかります。

 

でも、この直観が本当に正しいかどうか、論理的に証明しなさいと言われると、大変です。

 

なぜならば、窓穴2から入った光が重なっている可能性が絶対ない、と証明するには、かなりの技量を要するからです。

 

ここで、

 

「もし、周囲の壁がなく、天井と床だけであれば、窓穴2から入った光が、床をどのように照らすか?」

 

と、考えることができれば、一気に解決します。

 

答えは

 

「窓穴2と、合同な図形。向きも同じ。」

 

理由は

 

「平行面上に表れる切り口線は、平行だから」

 

「立体切断」の基礎知識です。

 

窓穴2が、床に向かって平行移動するわけです。

 

イメージがわかなければ、開成・平成27年大問4の図を見て下さい。

 

バッチリかいてあります。

 

本問は、この過去問の応用問題だったのです。

 

お手元に過去問がない人は、金太郎飴(あめ)を思い浮かべて下さい。

 

金太郎飴を見たことがない人は(実は、私も見たことがありません)、恵方巻を思い浮かべて下さい。

 

恵方巻を適当に斜めにして、床と平行な面(水平面)で、2か所切ります。

 

すると、切り口に表れる模様は、全く同じ(合同)で、向きも同じです。

 

具がまっすぐ入っていれば、の話ですが……

 

これと同じ理屈で、窓穴2から入った光が床を照らす部分は、「日光の角度に関係なく」窓穴2と合同で、向きも同じです。

 

「日光の角度に関係なく」

 

という部分が、決定的に重要です。

 

これによって、図3の斜線部分の斜めの辺は、窓穴1の長方形の左の辺を表す、と断言できます。

 

よって、斜線部分左下の点は、窓穴1の左下の点を表す、と断言できます。

 

よって、日光は、ECの角度で差し込んでくる、と断言できます。

 

以上で、難しい部分は、すべて解決です。

 

あとは、日頃から鍛えに鍛えた、立体切断の技術を、遺憾なく発揮して下さい。

 

 

対策

 2020年度の開成・算数は、大問1、4が理論的に難しく、大問2、3が手間のかかる問題でした。

 

結局、大問1を後回しにして(保留)、大問2、3を落ち着いて解き、大問4を捨て問にして、最後、時間がある限り大問1を解いて、部分点をかせぐ、というのが、最も現実的な合格の方法だったと、推測します。

 

これで、大体、合格者平均点になります。

 

「保留にする問題」「落ち着いて、ミスなく解く問題」「捨てる問題」の区別を、現場で実行できることが、重要です。

 

そのためには、

  • 日頃から、難しい問題に直面したときの、「歯ごたえ」「脳の衝撃の受け方」をよく観察して、どのタイプの問題かを見きわめるトレーニングを積むこと
  • 手間のかかる問題、作業量の多い問題をめんどくさがらずにこなし、「効率的に解く工夫」「ミスしないで解く工夫」を考えておくこと

が、大切です。

 

「この問題は、理屈は簡単。あとは手間がかかるだけだから、省略」

 

という勉強方法は、学校によっては(超難関校でも)有効ですが、開成受験には不適切です。

 

さらに言うと、

 

「直観的には大体予想がつくけれど、論理的な裏づけがないと、心配で先に進めない」

 

という、深い思考力をもった受験生が、大混乱し、当てカンに頼る受験生がスムーズに解けてしまうことがある、というジレンマに、どう対処すれば良いでしょうか?

 

入試は制限時間内の得点を競うものである以上、時間が足りないときは、直観もしくは当てカンで見切り発車することも、必要かと思われます。

 

この点は、受験生だけの問題ではなく、むしろ入試制度全体の問題だと思います。

 



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