ニュートン算の話


中学受験・算数の人気者、「ニュートン算」ってご存知でしょうか?

 

「ある牧場には、毎日同じ量の草がはえます。この草を、30頭の牛が食べると、40日でなくなり……」

 

という、あの問題ですね。

 

一応、「仕事算」に分類されています。

 

ではなぜ、わざわざ「ニュートン算」っていうのでしょう?

 

名前の由来について、不思議に思ったことはありませんか?

 

「牛が出てくるから」

 

いやいや、それなら「トン」じゃなくて「ビーフ」。

 

正解は、ニュートンが作ったから。

 

「ニュートンって、万有引力を発見した、あのアイザック・ニュートンですか?」

 

はい、そうです。

 

「でも、ニュートンは、力学とか微積分の分野で輝かしい業績を残した人ですよね。

 

それに比べると、ニュートン算って、小学生が入試算数で解く問題でしょう?簡単すぎるというか…。

 

それに、ケンブリッジ大学教授の時には、他にも色々な問題を出題していたでしょうに、どうしてこの問題だけ、ニュートン算と名付けられているのですか?

 

しかも、どうしてこの問題が、400年近く後の地球の反対側(日本)で、これほど重宝されているのですか?」

 

そうですよね。

 

とても興味深いご質問です。

 

実は、ニュートン算には、重大な秘密が隠されているのです。

 

ニュートンは、ケンブリッジ大学で教授職についていた時、この問題をケンブリッジの学生たちに出題して、キリキリ舞いさせていたそうです。

 

なぜ、ケンブリッジの秀才たちが、日本の小学生にも解けるニュートン算に手こずったのでしょうか?

 

それは、この問題を方程式で解いてみると、わかります。

 

方程式を立てるには、3つの変数が必要です。

  1. もともと生えている草の量X
  2. 1日にはえる草の量Y
  3. 牛1頭が1日に食べる草の量Z

そして、変数が3つの連立方程式を解くには、式が3本必要です。

 

ところが、ニュートン算では、式が2本しか立てられません。

 

これでは、XYZの具体的な数値を確定することは、論理的に不可能です。

 

つまり、この方程式を解くことは、不可能ということになります。

 

ケンブリッジの秀才たちが苦労したのも、もっともですね。

 

ところが、ニュートン算のすごいところは、XYZの数値を確定しないまま、「比の値」だけ求めれば、答えが出せる、という点にあります。

 

つまり、

  • もともとの草の量÷1日に減る草の量

が求められればよいだけ。

 

分数、すなわち「比の値」さえ求められれば良い。

 

だから、XYZの関係式が2本あれば十分。

 

ということになります。

 

分数の分子、分母の具体的な数値を求めることができなくても、分子:分母の「比の値」さえ求めることができれば、答えが出せる。

 

さらに一般化すると、問題を解く中で、解決不可能な障害があるとき、そこをあえて放置したまま、迂回ルートによって、目的を達成することができる。

  

ここに、ニュートン算最大のミソがあります。

 

何て数学的な発想でしょう。

 

何と示唆に富んだ問題でしょうか。

 

 

ところで、先ほど、「分子、分母の具体的な数値を求めることができなくても、比の値さえわかれば、目的を達することができる」と言いました。

 

実は、これって、「微分法」の核心部分です。

 

微分では、分子、分母とも、限りなく0に近づきます。

 

0÷0=0/0

 

「何じゃらほい?」(同感です)

 

「0で割っていいんだっけ?」(ダメです)

 

「まさか約分して1?」(とんでもない)

 

ここでニュートンは、限りなく0に近づくが決して0にはならない分子、分母の「h」どうしを約分して、「比の値」、すなわち「微分係数」を求める方法を発明したのでした。

 

私は、はじめて微分法の勉強をした時、その巧みなアイデアにのけぞるとともに、

 

「これって、ニュートン算のアイデアと同じではないか」

 

と思いました。

 

ニュートンの発想法の一端を垣間見たような気がしたのです。

 

そして、ニュートン算が、仕事算の一種どころか、微分法の勉強の「準備体操」にまでなっていたことに気づきました。

 

 微分法のような「世紀の大発明」が、ニュートン算のような「ちょっとした算数の問題」と同じアイデアで成り立っている。

 

とても興味深いことです。

 

 

さて、ここからは、日本の中学受験・算数のお話です。

 

日本の中学入試問題に、ニュートン算が導入されたのは、ひとつには、方程式が通用しないからということがあるでしょう。

 

中学入試では、方程式禁止が建前になっているからです。

 

でも、現在では、倍数算という名の連立方程式が常識となり、方程式禁止は、尻抜け法となっています。

 

しかも、ニュートン算は定番中の定番問題となり、解法は徹底的に研究されています。

 

関東風、関西風があり、さらに大手塾の全国展開により、東西文化が融合しているほどです。

 

それでも、なお、ニュートン算に特別人気がある、出題する意味があるのは、なぜでしょう?

 

ひとつには、中学入試問題を作成なさっている全国の数学の先生方が、ニュートンを深く敬愛なさっているから。

 

さらには、中学受験勉強が、少しでも、その後の数学学習にプラスになるよう、願っておられるから。

 

ニュートン算を解いていて、つくづく感じます。

 

かつては、ケンブリッジ大学に合格しないと勉強できなかったかもしれないニュートン算。

 

このような勉強を、小学生のうちからできる日本の中学受験生は、幸せです。

 




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