目次 |
「傾向」 |
1、概要 |
(1)入試結果 |
(2)出題分野 |
(3)難易度 |
2、各論(大問1~3) |
「対策」 |
(1)入試結果
開成中学2021年・算数は、ほぼ例年通りの出題傾向、難易度でした。
受験者平均点 | 合格者平均点 | |
2021年 |
45.8 | 55.8 |
2020年 | 38.6 | 49.5 |
2019年 | 51.0 | 64.6 |
2018年 | 62.0 | 73.9 |
2017年 | 40.1 | 54.8 |
2016年 | 39.7 | 53.7 |
(開成中学ホームページより引用・算数85点満点)
2021年の合格者平均得点率は、約66%です。
倍率は2.6倍と、例年(2.9~3.0倍)を下回りました。
これは、合格者数が例年通り400名弱であったのに対して、受験者数が100名ほど減少したためです。
社会状況を反映したものでしょう。
とても合格できそうにない人の「記念受験」や、遠方からの「冷やかし受験」が、減少したと思われます。
学校ホームページによると、2月1日に受験できなかった人向けに、2月23日の追試を設定していましたが、申請者は無かったということです。
皆さま、体調管理も完璧だったということです。
開成は、学校説明会の遅刻者がいないことで有名です。
遅刻者がいないどころか、ほとんどの方が、開始10分前には、入場し終わっています。
それだけ、親子共々、マインドセットができているということなのでしょう。
合格できそうな人だけが集まった、2021年の2月1日。
少数精鋭による、激戦でした。
そのように見てみると、全体平均点は、本来よりやや高めに出ているとも言えます。
(2)出題分野
大問1が「規則性」3問、平面図形と比1問。
大問2は「立体図形・体積」3問。
大問3は「ルール指定・2進法」5問。
いずれも、開成らしい出題分野です。
(3)難易度
大問1(1)~(3)は開成受験生にとっては易しく、(4)が難問。
大問2は(1)(2)は易しく、(3)がやや難問。
大問3は、長い問題文の意味を取るのに時間がかかりますが、(1)~(3)は易しく、(4)はやや難しく、(5)は論理的には(4)と同様だけれども、場合分けが多く、時間がかかる、といったところです。(ただし、スマートに解く方法があります。)
難問だった大問1(4)、大問3(5)を落としても、80%近く得点できますから、合格者平均点66%を上回ることができます。
合否を分けたのは、大問2(3)と、大問3の題意を読み取るスピードではないかと、推察します。
「出題分野&難易度マップ」を掲載致します。(難易度は、レッツ算数教室の分析によります)
Aが最も易しく、BCDEの順に、難しくなっていきます。
出題分野&難易度表 | ||
大問1 | ||
(1) | 規則性 | B |
(2) | 規則性 | C |
(3) |
平面図形と比 |
B |
(4) | 規則性 | E |
大問2 | ||
(1) | 立体図形・切断 | A |
(2) | 立体図形・切断 | C |
(3) | 立体図形・切断 | D |
大問3 | ||
(1) | ルール指定・2進法 | B |
(2) | ルール指定・2進法 | C |
(3) | ルール指定・2進法 | C |
(4) | ルール指定・2進法 | D |
(5) | ルール指定・2進法 | E |
それでは、順に見ていきましょう。
大問1
(1)~(3)については、開成受験生には説明不要と思われます。
問題は(4)です。
1÷9998の小数第48位、56位、96位を求めるのに、まともに筆算すると、たたみ1枚分ほどの計算用紙が必要です。(しかも、罫線入り!)
そこで、工夫。
もっとも1÷9999であれば、0.0001000100010001……ですが、これとの比較で……というのも、無理があります。
でも、48位、56位、96位と、「8の倍数」が並んでいることから、周期性があるのではないか?という想像がつきます。
そこで、16ケタぐらいまではがんばってみよう、と覚悟を決めて、筆算を決行します。
すると、0が多く、計算は以外とスイスイ進み、
0.0001000200040008……
という、魅力的な規則性が見つかります。
この規則性が永遠に続くならば、あとは、繰り上がりに注意して答えればいいわけです。
続くものとして解いても、とりあえず正解だし、小学生の答案としてはOKです。
でも、「なぜ続くのか?」という疑問を解決したい、という人向けに、一言説明しておきましょう。
高校数学で、無限等比級数というのを勉強します。
等比数列が無限に続くものです。
公比が1より小さいと、数列は限りなく0に近づきます。その和は、公式
初項÷(1ー公比)
で、求められます。
等比数列の和の公式は、中学受験・算数でも使われています。
等比数列の和では、分子が引き算になっていますが、無限等比級数では、引く数が限りなく0に近づくので、引く数=0として計算すると、上の公式になります。
さて、本問の「1/9998」で、分子、分母を10000で割ってみましょう。
1÷9998
=0.0001÷0.9998
=0.0001÷(1-0.0002)
よって、初項0.0001、公比0.0002の無限等比級数の和になっていることが、確認できました。
つまり
0.00010002000400080016……
が永遠に続きます。
大問2「立体図形・切断」
(1)はサービス問題。
(2)は、三角すいの底面積、高さとも、不明なので、三角すいの体積の公式で求めることは、あきらめます。
でも、それほど難しくはなく、立方体全体から、4つの物体を取り除くという方法で、難なく解けます。
(3)は、(2)をヒントにします。
(2)で、取り除くべき物体が、それぞれ、求めたい三角すいの「各面」に対応しているということを見抜けば、(3)も、図形をどのように分割すればよいか、自ずとわかります。
あとは、三角柱斜め切り、直方体斜め切りの公式を使って、求められます。
(2)でコツをつかみ、(3)に応用できたかどうかは、本年度の合否に直結したのではないでしょうか?
大問3「ルール指定・2進法」
本問のルール指定問題は、問題文が長く、ルールの意味も取りにくいので、いかに速く読み取れたかが、合否に直結したと考えられます。
通常、ルール指定問題では、「例えば」がもっと早く登場します。
ルールが少々わかりにくくても、「例えば」を読めば、「ああそうか」となります。
ところが、本問は、問題文がびっしり書かれた1ページの3分の2ぐらい読んで、ようやく「例えば」が出てきます。
それまで、意味が取れずに、パニックになってしまった受験生もいたのではないでしょうか?
さらに、問題文の枠で囲った部分の1行目、「審判は最後に渡されたカードのうち1枚を出します」の意味は、かなり誤解を招きやすい表現のように、私には思われます。
「最後」というのは、「その時点で最後」という意味なのですが、まだ問題文全体や「例えば」を読んでいない段階では、「ゲーム全体で最後」の意味にも受け取れてしまい、混乱します。
審判は、「直前」に渡されたカードのうち1枚を出します、という意味であることが、そのうちわかりますが、それまでは、意味不明です。
これらを乗り越えて、ゲームのルールがつかめれば、(1)~(3)は、特に悩む問題ではありません。
コツもつかめて、どんどん解けます。
(4)では、少々場合分けが必要となり、それなりに時間がかかりますが、一応、解けるでしょう。
さて、難問の(5)です。
ここまで、0と1がいっぱい並んだ図面を、たくさんかいたことと思います。
(5)も、図面をかいて解こうとすると、場合分けが多岐にわたり、数十枚の図面をかくことになります。
時間的に厳しいでしょう。
でも、正答率は低そうなので、合否を分けることはありません。
さて、かいているうちに、足し算の筆算をやっているような気分になってくるかもしれません。
でも、何か変な足し算です。
は、納得できますが、
など、ありえない足し算です。
ここで、問題文1行目、「0と1のいずれかが書かれたカード」ということから、2進法を連想できると、これら不思議な足し算の意味が、つかめてきます。
1+1+0=0とは、2進法の足し算の1の位が0という意味なのです。
2進法では、1+1=10です。
すると、繰り上がりの1は、どこへ行ったか?というと、これは、審判が受け取ったのです。
審判は、次の操作で、この1を出しますが、これは、「繰り上がりの1も、足し算に加えて下さい」という意味です。
このような目で、問題文のルールをもう一度、見直してみましょう。
① 3枚とも0の場合
1の位は0.繰り上がりも0
よって、スコア(1の位)は0で、審判(繰り上がり)は0
②2枚が0で、1枚が1の場合
よって、スコア(1の位)は1で、審判(繰り上がり)は0
③1枚が0で、2枚が1の場合
よって、スコア(1の位)は0で、審判(繰り上がり)は1
④3枚とも1の場合
よって、スコア(1の位)は1で、審判(繰り上がり)は1
本問のルールは、2進法の足し算と、ピッタリ対応しています。
A君+B君=スコア
という、2進法の足し算の筆算を、1の位から順番に行っていて、審判のカードの数字は「繰り上がりの数」を表しています。
「カードを6枚、横1列に並べて、右はしのカードから順番に操作する」とは、「2進法の6ケタの整数どうしの足し算を、1の位から順番に行う」という意味です。
そうだとすると、A君の数がわかっているので、あとは、スコアの数が決まれば、B君の数は、スコアからA君の数を引くことにより、1通りに決まります。
「スコアの数」ー「A君の数」=「B君の数」
です。
「スコアの数」≧「A君の数」となるように気をつけて、スコアの数を決めればよい、ということになります。
こうすると、図面は1つ書けばよく、あとは、計算で、スマートに求められます。
スコアには1が2つあります。
6か所の置き場所のうち、1を置く2か所を選ぶ方法は、
6×5÷2=15通り
このうち、「スコアの数」が「A君の数」より小さくなってしまうのは、
の3通り。
よって、15ー3=12通り……答え
ところで、まだ一つ、確認していない条件が残っています。
「B君の勝ちで」
という条件です。
なぜ、この条件が入っているのか?
それを明らかにするためには、A君の勝ちだと、何が起きるか、考えてみればよいでしょう。
A君の勝ちとは、すなわち、審判に最後に渡されたカードが「1」2枚ということ。
すなわち、一番左の数が、A君、B君、審判の順に、「011」です。
0+1+1=10(2進法)
なので、スコアは、もし7けた目があるなら、7けたの整数になります。
すると、スコアの6けた目まで、どのように0と1を配置しようが、スコアの数がA君の数を上回り、成り立ってしまう=最後に、成り立たない場合を引く必要がない=問題として、つまらない、ということになります。
それを防ぐための条件でした。
超難問も散見されますが、合格点を取るだけなら、避けて通れます。
結局、対策は、ライバルが落とさない問題を、自分も落とさない、という点に尽きます。
具体的には、どの問題でしょうか?
合格者平均点から推察すると、合格者の多くは、大問3の(1)~(3)を得点したようです。
大したものだと思います。
かなり難解な長文のルールを、入試本番の極度に緊張している中、終了時刻も迫っていたでしょうに、よく落ち着いて、意味を把握したものです。
この精神力と、算数的読解力が、最近の開成・算数のテーマの一つになっています。
日頃から、数字替え問題を解くときでも、
「本当に数字替えなのか?」
「どこか条件が変わっていないか?」
と、目を光らせて、注意深く読んでいるのでしょう。
長文化の傾向は、大学入試にも見られ、今後の開成中学でも続くでしょう。
開成を目指す人は、従来の算数の勉強に加えて、算数的読解力を鍛えましょう。
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